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小説『方舟』夕木春央著(講談社)感想‣クローズドサークルの作品が好きなミステリーファン必読推理小説、結末の予想はほぼ不可能

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小説『方舟』をどうして読んだのか? 本の概要

本著『方舟』が2023年本屋大賞にノミネートされた(2023.1.20)との記事を見て早速本屋で購入しました。それ以前に本屋店頭で売られているのを横目で見ていましたが、内容も良く分からなかったので手に取ってみる事はありませんでした。また、それ以前に『方舟』が週刊文春ミステリーベスト10 2022国内部門&MRC大賞2022 第1位をダブル受賞したというニュース(2022.12.7)も大変気なっていました…読んだら驚きの内容にびっくり仰天!大変面白いので是非お読みいただく事をお勧めします。

<あらすじ>

9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?

大学時代の山岳サークルの友達らと従兄と一緒に山奥の「方舟」と名付けられた、地下建築を訪れた柊一は、偶然出会ったキノコ狩りで道に迷った三人家族とともに得体の知れない大きな地下建築の中で一夜を越すことになります。
翌日の明け方、突然地震が発生し、出入り口の扉が巨大な岩でふさがれてしまいます。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた為、いずれ地下建築は水没する運命にあります。焦る彼らにさらなる悲劇が襲います。仲間が一人殺されたのです。
だれか一人を犠牲にすればなんとか脱出できる状況となります。当然生贄には、その犯人がなるべきだと誰もが考えました・・・

タイムリミット地下建築物が水没するまでおよそ1週間。それまでに、彼らは殺人犯を見つけなければなりません。

小説『方舟』の感想(ネタバレ無し)

犯人が誰なのか、どんな動機で最初の殺人事件が起こったのか全く分からないまま、密室の中で次々と新たな凄惨な殺人事件が起こるので恐怖感は募るばかりでした。犯人は一人なのかあるいは共犯者がいるのか? 

登場人物は9名です。大学サークルの仲間5名にそのメンバーの1人の従兄の6名。後から加わったという山中のキノコ狩りで道に迷った3人家族。地下建築物の中で一夜を明かしたものの、早朝突如発生した地震で入り口付近にあった大きな岩が出入り口を塞いでしまいます。更に地震の影響で地下に貯まり始めていた水の水位が増し、1週間で水没を免れないという逼塞した状況に陥ります。

抜け出す方法は誰か一人が犠牲になり、岩を引き上げる操作を決死の覚悟で行えば他の人は逃げ出せるという設定になっていました。300ページもある大書ですが、290ページあたりまで犯人が誰なのか、犯行動機が皆目見当が付かないという猛烈なじれったさ読んでみないと分からないと思いました。

また、犯人が分かってみるとそうなのかと納得はするものの、最後の最後の大どんでん返しが待ち構えているので大きな「ショック」は隠せません。覚悟を決めて読み進める必要があろうと思いました。

今思い返すと伏線はいろいろ描かれていました。たとえば・・・

方舟の全体構造の簡単な断面図(イラスト)はかなりのヒントになります。地下三階は完全に水没していますが、水脈は外部まで達している様でした。息を何分か止められ、暗闇に水中ランプでもあれば、ジェームズ・ボンドのように泳いで抜け出せそうです。わたしにはそんな勇気はありそうも有りません。さらに、スキューバダイビング用のマスク、タンク(1/3程度空気がまだ残っていそうでした)がきちんと用意されている点も大変重要なポイントとなることに後々気付かされます。

スマホの顔認証、指紋認証なども二重三重の犯罪を犯す大きな理由になったのは驚きでした。残虐性にも限度はあろうと思いますが、顔認証でスマホが開かれてしまうと危険な情報が分かってしまうので、首を切って頭を捨ててしまうという発想はご勘弁願いたいものです。マフィアですらとても考えつかない殺しの理由でしょう。

三人家族のお父さんは犯人が再び現れる事を見越して、地下室の冷たい水の中に身を潜め、ボンベの中の空気を吸って息をしていました。お父さんはすっかり身体が冷え切り犯人が出現しても、身体の自由が効かず返り討ちにあってしまいます。しかし、スマホはわずかながら犯人の容子を映し出していました…これは著者夕木春央氏が忍者が使う”すいとんの術”をご存知で、いつか自分が書く小説に使ってみようと考えていたトリックではないかと思いました。

小説『方舟』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

読書メーターで公開されている感想から】

総じて好意的な意見が多い様です。皆さん最後のどんでん返しに呆気に取られています。

あまりにも残酷な最後に震えが止まらない。全てが終わったと思ったあとで、こんなどんでん返しがあるなんて。今までに、こんな小説があっただろうか?地下建築に閉じ込められた主人公たち10人。誰か一人を犠牲にすれば助かる中で、一件の殺人が起こる。そして皆が思う。犠牲になるのは犯人が良いと。誰が犯人か、謎を追うストーリーも面白い。だがこの小説の魅力はそこじゃない。犯人がわかった後、そこから何が起こるのか。この小説は途中で離脱してはいけない。必ず最後まで読むべきだ。そして最後に起こることから、目を背けてはいけないのだ。

エグい。読了後しばらく放心状態…。こんな結末ある? 最後の1文字まで気が緩まない。犯人絞り込むところからずっと心臓バクバクしてしまった。地下建築なんて絶対行きたくない!危ない所には行かない、そう決心しました

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