『生きる LIVING』のあらすじ概要
黒澤明監督の不朽の名作映画「生きる」(52)を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ。
1953年、第2次世界大戦後の復興途上のロンドン。仕事一筋に生きてきた役所の市民課に勤務する課長ウィリアムズは、周囲の部下からは煙たがられ自分の人生を空虚で無意味なものと感じていました。そんなある日、彼はガンに冒されていることがわかり、医師から余命半年と宣告されます。手遅れになる前に一瞬だけでも充実した人生を手に入れたいと考えたウィリアムズは、仕事を放棄し、海辺のリゾート地で酒を飲んで馬鹿騒ぎしますが、満たされることはありません。息子夫婦には病気で余命半年という事実を打ち明けられないでいました。ロンドンへ戻った彼はかつての役所の部下マーガレットと偶然再会し、バイタリティに溢れる彼女と過ごす中で、自分も新しい一歩を踏み出すことを決意します。しかし、彼の一歩は無関心だった周りの人々の意識を徐々に変えていくことになります。
「ラブ・アクチュアリー」などの名優ビル・ナイが主演を務め、ドラマ「セックス・エデュケーション」のエイミー・ルー・ウッドがマーガレットを演じる。
2022年製作/103分/イギリス
原題:Living
ロッテントマト批評家支持率:96%
『生きる LIVING』のスタッフとキャストについて
オリバー・ハーマナス監督:「イギリスに対して先入観を持たない人を選ぶべきだ」という本作製作者スティーヴン・ウーリーの意見通り、南アフリカ出身の映画監督として起用されます。
09年に発表した監督第1作「Shirley Adams」はロカルノ国際映画祭のコンペティション部門やトロント国際映画祭に出品され、国際的な注目を獲得。更に、11年に『Beauty』(原題)でカンヌ国際映画祭のクィア・パルムを受賞しています。
カズオ イシグロ 脚本・製作:
長崎県出身。5歳のとき英国サリー州ギルフォードに移り、1982年、英国に帰化する。
同年、長編小説「遠い山なみの光」で作家デビュー。89年に発表した「日の名残り」はベストセラーとなり、英文学界最高峰といわれるブッカー賞を受賞したほか、ジェームズ・アイボリー監督によって映画化され、第66回アカデミー賞で作品賞を含む8部門にノミネートされています。17年10月にノーベル文学賞を受賞しています。
➢おすすめ映画『日の名残り』(感想)名門貴族に人生を捧げた執事の回想録 アンソニー・ホプキンス主演。
ビル・ナイ(ウィリアムズ):イギリスの国民的俳優、本作のその抑制された演技が見ものとなっています。
彼が発見したのは、自分の人生に意味を与えるものは、誰かのために何かをすることでした
と映画(公式)解説にあります。そのことをウィリアムズは映画の中で多くを語りませんが、彼の最後の行動で実感出来ました。
リチャード・カーティス監督の「ラブ・アクチュアリー」(03)で注目を集め、以降は「アンダーワールド」シリーズ(03、06、09)や「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」(06)のデイビー・ジョーンズ役など大作にも出演しています。本作ではアカデミー主演男優賞に初ノミネートされています。
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エイミー・ルー・ウッド(マーガレット):楽観的な若い秘書で、自分の診断結果に悩むウィリアムズにとって思いがけないただ一人の相談相手となります…
ベネディクト・カンバーバッチ、クレア・フォイ、アンドレア・ライズボローが出演する長編映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』(21)に出演しています。
アレックス・シャープ(ピーター):『心のカルテ』では、リリー・コリンズ、キアヌ・リーヴスと共演しています。
➢複雑な家庭環境で育った20歳の女性エレン、重度の拒食症に苦しみながらも、グループホームでの生活を通じて復活して行く姿を描く映画『心のカルテ』
『生きる LIVING』のネタバレ感想・見どころ
【ネタバレ有り】
黒沢明監督の『生きる』は劇場鑑賞ではなく、大分以前にTV放映で見た記憶がありました。それ程真剣に考えて見ていなかったので、『不朽の名作』と称されても正直実感としてありませんでした。「そんなものなのかなぁ」という感想でした。
本作『生きる LIVING』は限りなく、原作のストーリーに近いものと聞いていました。定年退職ももうそろそろという初老の課長、職場でも家庭でも何となく煙たがられている存在として登場してきます。更に畳みかけるように癌に冒され医師から余命宣告を受け万事休すとなります。絶望し大量の睡眠薬を購入していました。財産の半分を銀行口座から引き下ろし、散財するつもりで海浜の行楽地に迷い込みますが、そこでのバカ騒ぎも気を紛らわす事にはなりません…
都会に戻り、偶然再会した職場の女性と話をする内に打ち解けていきます。彼女は、彼に付けたあだ名が「ゾンビ」であることを白状します(これは痛烈です。本当既に死んでいるけれども、まだ生きている…)家族や職場の人に一言も打ち明ける事が出来なかった「余命」の事を彼女だけにはポロリと吐露しています。そして、彼女と接している内に俄然”やる気”が出てきます。正直、これは「遅過ぎはしないか」と感じました。真面目一筋で生きて来た紳士が”小娘”と親しく接した事くらいで、人生感ががらりと変わってしまうものでしょうか!?
カズオ・イシグロ脚本で、アカデミー賞候補としてノミネートされるなど好評かされている映画ではありますが…
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