日本史、世界史は学生時代に習い、一応知っているつもりになっている事は、実は大変危険だと最近感じ始めました。なぜならば、例えば五・一五事件などは歴史教科書の記載は、青年将校のクーデター等わずか数行程度ではないでしょうか? 実際、今回新書本で改めて読んでみて、何がどのように起きたのか、大変興味深い内容を深く理解することが出来ました。新たな研究により、昔の事件の真相もどんどん新たに解明されていくものもあるかもしれません。とにかく、「知ってるつもり」という生半可な知識程危険なものはないと思います。謙虚になってもう一度ゼロから歴史を学び直すとまでは言いませんが、時間も無いし、これからも好奇心だけは失わず、過去からどんどん学び続けたいと思います。
最近読んだ歴史関連新刊書8冊をご紹介します。いずれも新書本サイズなので2時間位で読み切れます。素晴らしい研究成果がまとめられており、読めば知識(教養)が身につくので、1000円前後の投資は直ぐに回収できると思います。
『歴史の教訓』兼原信克著
最近、5.15事件という本を読んで、昭和の犬養毅首相暗殺という殺伐とした世相の中、如何に軍部の暴走が始まったかという事に強い関心を持っていました。また、以前『失敗の本質』という書も読んで、詳細な内容的までは余り定かではありませんが、戦術的な作戦の失敗失敗、組織論の誤りを指摘している内容ではなかったかと思いますが、本書は根本的に異なり、国家戦略として『統帥権の独立』こそが日本の誤りと指摘していました。わずか200ページ余りの内容ではあるものの、ある部分は核心的な指摘もあり、非常に分かり易く明解で、学ぶべき点も多々ありました。是非、手に取られ、読まれることをお勧めします。
感想|「歴史の教訓」兼原信克著/シビリアンコントロールが重要、海軍・陸軍の暴走は許さない!
『日中戦後外交秘史 1954年の奇跡』 加藤徹、林振江著
本書も少し前ですが、毎日新聞の書評欄に紹介されており、気になっていましたので、本屋の書棚に見つけ早速読んでみました。私はこの書を読むまで、李徳全女史の事は全く知りませんでした。また、1954年当時日本各地でこれほど歓迎された中国要人が訪日された歴史がある事にびっくり仰天させられました。埋もれた日中外交史です。
日中戦後外交秘史 1954年の奇跡 加藤徹、林振江著 レビュー
『「馬」が動かした日本史』 蒲池明弘著
本書を読むことにより日本史の理解の仕方に関して一皮剥けた感じがします。各地に残る馬の飼育に由来する地名や豪族の血縁・地縁などの関係も紐解く記載もあり非常に興味深く読む事が出来ます。一般的な歴史書では教科書的な理解しかできませんが、本書の様な別な角度から新たな解釈が加わることで、地名の由来が分かったり益々歴史に興味が湧いてきます。
『皇国史観』片山杜秀著
良く聞くことはあっても明確に説明できない言葉でした。大昔からある考え方と思いきや明治以降、昭和に掛けて強調されるようになり、主に軍事教育で教え込まれたとあります。本書は毎日新聞書評欄でも新刊書として紹介されていた為、読んでみたものです。豊富な内容も分かり易く説明されており、大変に参考になる解説書だと思います。10回分の講義形式に区切られており、「皇国史観」をもう一度整理して理解したい方必読の書だと思いました。
感想「皇国史観」片山杜秀著/天皇制について、少し考えてみるきっかけに!
『日本人が誤解している東南アジア近現代史』川島博之著
改めて問われて見ると東南アジア諸国の歴史をどれだけ勉強したことがあるのだろう? 世界史の教科書では中国とヨーロッパが中心で、イスラムとインドがその次のボリュームで取り上げられている。しかしながら、東南アジアの歴史は詳細を勉強する機会はなかったのではないか? 第二次世界大戦でどのような戦いがあったのかは戦記ものでも読まない限り詳しくは分からない。調度いい本が出版されていたので読んでみました。結構分かり易い面白い本だったので是非お勧めします。
感想「日本人が誤解している東南アジア近現代史」 川島博之著/もっと早く知っておけばよかった!
『椿井文書-日本最大級の偽文書』馬部隆弘著
中世の地図、失われた大伽藍や城の絵図、合戦に参陣した武将のリスト、家系図……。これらは貴重な史料であり、すべて本物とばっかり思い込んでいました。学校教科書や市町村史にも活用されてきました。しかし、もしそれが後世の偽文書だとしたら...しかも、たった一人の人物によって創られたもので、お金で売られていたものと知ったどうでしょうか。椿井政隆(1770~1837)が創作し、近畿一円に流布し、現在も影響を与え続けている数百点にも及ぶ偽文書に関わる解説書・論文です。
感想|「椿井文書-日本最大級の偽文書」 馬部隆弘著/数百点にも及ぶ偽古文書が流布している理由とは?
『中国』の形成 現代への展望」 シリーズ 中国の歴史⑤岡本隆司著
大学卒業後、企業に就職し30数年在職しましたが、多分その半分以上を中国・台湾ビジネスにかかわってきました。しかしながら、中国の歴史については、現地に何年駐在しようが、どれほど厳しい交渉案件を乗り越えようが話は全く別で、「歴史」の理解については、改めてしっかりと時間を確保し、勉強しないと理解はまったく深まらない事と悟りました。
新刊書紹介|「『中国』の形成 現代への展望」 シリーズ 中国の歴史⑤岡本隆司著(岩波新書)
『五・一五事件』小山俊樹著
歴史の教科書では、2,3行で説明されている事件ながら、その影響力は政党政治の終焉、この事件をきっかけにして第二次世界大戦の泥沼に日本は入り込むようなかなり暗い雰囲気の事件という印象をもっていた。背景にある人物像や世相など詳細な解説がなされており、事件の全容がよく理解できる作品となっている。また著者は私より20歳以上も若手の学者であり、その踏み込んだ歴史の造詣の深さには恐れいりました。
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