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おすすめ本感想【植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫】田中修著(中公新書)

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おすすめ本の紹介
Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像
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『植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫』の概略

植物のすごさは、何といっても成長力とこれを支える光合成のしくみです。水と空気中の二酸化炭素を材料に、太陽光を利用があれば、葉っぱでブドウ糖やデンプンをつくる光合成の機能には改めてびっくり仰天します。人間の能力では、小さな葉っぱがしているこの光合成をいくら頑張っても真似することはできないそうです。植物が生きるために必要なアミノ酸やタンパク質、脂肪やビタミンなど何でも自分でつくり出してしまう。そして、植物の成長によってつくり出される多くの物質に、人間や動物も、昆虫や多くの微生物もすべてがそれに頼って生きています。

また、成長力も恐るべきです。キャベツの一粒の種の重量はわずか5ミリグラム、発芽して4カ月後には1.2㌔の一個のキャベツに成長します。なんと24万倍まで大きく重く成長します。

また、豊かな緑の中に新鮮な空気と森の香りに触れ、小鳥の声を聞きながら歩く「森林浴」は気持ちがいいものです。樹木が放つ香りに、私たちは心をいやされ、心身をリフレッシュされます。この香りの効果を利用する「アロマセラピー」という治療法があるほどです。「香り」は、ただ「やさしい」だけではありません。樹木や草花には、香りで自らのからだを守るために、カビや病原菌を退治する役割があるといいます。ヒノキは葉っぱだけでなく幹や枝も香りが高く、細菌や虫にも強い材は、古くから風呂桶や箪笥、建築材に使われてきました。ヒノキに含まれ、抗菌、殺菌作用をもつ「木の香り」は「ヒノキチオール」といわれます。などなど本書には植物に関わる興味津々の話が満載されていました。

『植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫』のトピックス

【菜の花】

最近は至る所にある河川敷の土手が春になると一面黄色一色の絨毯の様な『菜の花畑』になる光景を見掛ける事が増えました。しかし、このヨーロッパ原産のナノハナは凄いです。中国では『油菜』というメニュー名で、短時間で茹でてオイスターソースを掛けて食べます。わたしの大好物の中華料理の一つです。実に美味で広東省広州や香港の『小吃店』でよく食べました。更に、ナノハナを刈り取ってその葉や茎が土にすき込まれると、肥料となって土地を肥やす「緑の肥料」効果が期待できるようです。実を絞って「菜種油」、その搾りかすは「油かす」として肥料に使われます。「なたね油」は家庭や学校給食で天ぷらを揚げるのに使用された後、回収されきれいにした後、バスやトラックをディーゼルエンジンを動かす燃料「バイオディーゼル燃料」として使われている事も知りました。

更に更に、ナノハナは「土壌の放射能汚染を緩和する効果がある」と言われ、地中の放射性物質であるセシウムやストロンチウムを吸収するという効果が期待できます。

【ヒガンバナ】

「毒をもつ植物」「墓地に咲く植物」として余り良いイメージを持たれません。ヒガンバナの球根に含まれる成分「リコリン」が有毒だそうです。ヒガンバナの球根が有毒であることを知っていた先人が墓や田や畑の畔に植えて、モグラやネズミの侵入を防いできた経緯があるという。

【花の色素は、防御物資】

目立つ色でハチやチョウなどの昆虫を誘い、寄ってきてもらい花粉を運んで貰う為、目立つ事だけが目的ではないようです。それは、植物たちの紫外線対策でした。花びらの色素物資であるアントシアニンとカロテンは花びらを美しく綺麗に装う二大色素です。これらは紫外線が当たって生み出される有害な活性酸素を除去する働きがある物資でもありました。そういう意味では花そのものを食したり、ハイビスカス茶などを飲むことも健康には良いのかもしれません。

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『植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫』の世間の一般的な意見にはどんなものがあるのか?

読書メーター投稿記事より抜粋

物言わぬ植物の生きるしくみ。そのしたたかさに驚きの連続だった。例えば、柿の実はタネが熟すまでのあいだ、果肉を渋くすることで虫や動物に実をかじられないようにしている。タネができあがってくると甘くなり、虫や鳥に食べさせて、タネを運んでもらうのだ(本文45頁)

身近な植物についていろいろな観点から見つめ直すことができて面白い。植物ホルモンや含まれる化学物質の名前まで、かなり具体的に紹介されていて勉強になる。 ただ、植物名が羅列的に出てくるので、それらを全く知らないと読み進めるのが大変かも。

最後に

改めて感心した植物の最大の機能は「太陽光を利用し、葉っぱでブドウ糖やデンプンをつくる光合成」に尽きると思います。植物の葉っぱで「簡単」にやってそうに見える光合成の化学反応を人類は真似して作り出す事はまだ出来ません。

動物は植物の存在が無ければ生きて行くことが出来ない。即ち「光合成」こそが全ての生命の源である事が分かります。

この意味では道端の雑草や日陰のコケ類でも素晴らしい機能を備えていることにびっくり仰天します。

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