>

新刊書紹介|『自転しながら公転する』山本文緒著(新潮社)2021年度本屋大賞ノミネート作品!

スポンサーリンク
おすすめ本の紹介
スポンサーリンク

『自転しながら公転する』の概略(あらすじ)

enriquelopezgarreによるPixabayからの画像

東京のアパレル店店長で働いていた32歳の都は母親の看病のため茨城の実家に戻り、地元のアウトレットのショップで派遣社員として働き始めるが、職場ではセクハラなど問題続出、実家では両親共に体調を崩している。

恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなこと無理! ぐるぐる思い惑う主人公・都の人生の選択から目が離せません。本当に最後の彼女の選択まで全く気が抜けず読む通す事ができます。

著者山本文緒氏の著作は初読みでしたが、非常に分かり易い文章で、『等身大』という言葉がぴったりな主人公です。起こっている事への対応に非常に共感し易い内容になっています。

略歴:1962年神奈川県生れ。OL生活を経て作家デビュー。99年『恋愛中毒』で吉川英治文学新人賞、2001年『プラナリア』で直木賞を受賞した。本作品は著者7年ぶりの小説です。なお、著者は大学時代は落語研究会に所属していたそうです。その経歴は文章に十分生かされていると思いました。

他著者関連投稿記事:

新刊書紹介|『逆ソクラテス』伊坂幸太郎著(集英社)2021年度本屋大賞ノミネート作品!

新刊書紹介|『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学 野口悠紀雄著(文春新書)

新刊書紹介|『ニッポン巡礼』アレックス・カー著(集英社新書ヴィジュアル版)

新刊書紹介|『自分の頭で考える日本の論点』出口治明著(幻冬舎新書)

『自転しながら公転する』の感想

Myriams-FotosによるPixabayからの画像

本年度本屋大賞ノミネート作(10作品)という事で、本屋で買って読んでみました。訳のわからない題名にも拘らず、非常に分かり易い文章で感情移入し易い内容の小説でした。(主人公は32歳のOLなのでおっさんに感情移入されても怒られそうですが、、、)

本屋大賞ノミネート作品でなければわたしは手にする事も無かった分野の著作なので、「本屋大賞」という試みは本屋の作戦にまんまと乗ってしまっていますが、一方、大変有り難い企画だと改めて感心させられました。良い本を広める、良い作家をどんどん世に売り出していくことは重要だと思います。

・・・

わたし自身既に定年退職している為、主人公・都と同年齢の女性との接点は最近余りありませんでした。また、まだ会社にいた時もここまで詳しく周囲の女性社員のプライバシーに立ち入り、聞いたことも無ければ、相談を受けた事もありせんでした。あるいは、全くこの手の問題には関心も無かったのかもしれません。

しかしながら、本書を読んでみて都の環境・境遇・処世方法など聞けば聞くほど共感出来るところ、少し待てよといいたくなる様な部分などもあり、引き込まれていきました。こんな等身大の小説は未だかつて読んだことがありませんでした。非常に興味深い本でした。

舞台が常磐線沿いの茨城の町という設定も、同じ常磐線沿いに住んでいる為、少し親近感が湧きました。しかし、茨城県内のアウトレットモールでどこなのか良く分かりませんが、、、

貫一という青年も中卒、回転寿司を辞めて、無職の状態で都の両親の自宅に呼ばれて挨拶をしていますが、自分の立場からすれば、この貫一の度胸というか、小さな事を気にしない大らかさには度肝を抜かれますが、逆に都の両親からすれば、このような青年を紹介受けたら、地球がひっくり返るような驚天動地の出来事ではないかと想像されました。

さらに、職場でのセクハラ、アルバイトから一般社員への昇格問題などなど世の中狭い世界の中でも心を痛める事、喜ばしい事などで溢れ返っているのだと再認識出来ました。

 

『自転しながら公転する』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

Andrea BohlによるPixabayからの画像

アマゾン書評から引用します。総じて読みやすい、分かり易いとの意見が大半でした。

どこにでもありそうな、無理して何かをつかもうとか知ろうとする作業。そんな作業に疲れてむしろ自分を不幸だと呪う自分。回り道しながら多分このあたりなんだろうなと思う頃には、そうした不幸が思い出に変わってくれるのでしょう。日常はちょっとした不幸を乗り終えていくくらいがいい、って教えてくれます

・・・感情豊かな都、冷静な貫一、「明日死んでも百年生きても触れたいのは彼だけだった」という都の言葉は強烈、そして最後に結婚する娘に言う言葉がかっこいい「別に幸せになろうとしなくてもいいのよ、幸せにならなきゃって思いつめるとちょっとの不幸が許せなくなる、少しくらい不幸でいい、思いどうりにならないものよ」作者は作品を通じて読み手に素敵な言葉を与えてくれる、今回も期待を裏切らない作品だった・・・

コメント

タイトルとURLをコピーしました