『林檎とポラロイド』のあらすじと概要
ギリシャの新鋭クリストス・ニクが長編初メガホンをとり、記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界を舞台に描いたドラマ。
ある日突然バスの中で記憶を失った男は、治療のための回復プログラム「新しい自分」に参加します。彼は毎日送られてくるカセットテープに吹き込まれた内容をもとに、自転車に乗る、仮装パーティで友だちをつくる、ホラー映画を観るなど様々なミッションを忠実にこなし、ポラロイド写真で記録を残すという生活を送って行きます。くだもの屋で、主人公が過去から好物だったらしい林檎を買っていると、住所を尋ねられた拍子にふっと以前住んでいた住所を応えるシーンも出来てきます。
そんな中、男は同じく回復プログラムに参加する女と出会い、親しくなっていきます。男が新しい日常に慣れてきた頃、彼はそれまで忘れていた、以前住んでいた番地をふと口にする。新しい思い出を作るためのミッションによって、男の過去が徐々にひも解かれていく様子が丁寧に描かれていきます。
本作品はケイト・ブランシェットが絶賛し、作品完成後にもかかわらず製作総指揮に名を連ねている作品です。
原題:Mila
雰囲気的に少しに通った感じの映画『天国にちがいない』
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『林檎とポラロイド』のスタッフとキャストについて
クリストス・ニク監督・脚本:リチャード・リンクレイター監督の「6才のぼくが、大人になるまで。」、ヨルゴス・ランティモス監督の「女王陛下のお気に入り」などで助監督を務めてきたニク監督。長編映画監督デビュー作品。
ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門のオープニング作品に選出され、この映画の評判の高さを聞きつけたケイト・ブランシェットも観賞後大絶賛し、自ら監督の才能に惚れこみ、エグゼクティブ・プロデューサーとして参加したと。
長編2作目もケイト・ブランシェットプロデュース、キャリー・マリガン主演で制作が決定しているそうです。
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アリス・セルベタリス:ギリシャ・アテネ出身。元ダンサー。
ソフィア・ゲオルゴバシリ
『林檎とポラロイド』のネタバレ感想
バスの中で突然、記憶を失い自分が誰なのか分からなくなる「奇病」に冒された男が記憶の『回復プログラム』をこなす日常が始まります。何の変哲も無い普通の男が、「記憶喪失」になり、カセットテープに吹き込まれた指示通りのミッションを消化していきます。セリフも殆んど無く、つかみどころの無いストーリー展開に序盤は正直非常に退屈しました。
与えられたミッションにどんな意味があるかは一切語られる事はありません。ミッション内容は徐々にエスカレートして行くようでした。10㍍の高さからプールに飛び込む、運転中の車を立木に衝突させる、仮想パーティーで友達を作る、バーで知り合った行き当たりばったりの異性と仲良くなるという項目もありました…
後に判明しますが、彼以外の「記憶喪失者」にも全く同じミッションが指示されていることには驚きました。
『ポラロイド』『カセットテープ』など今では過去のものとなった「アナログ」を駆使し、独特な哀愁とユーモアを表現して行く映像作りは非常に珍しく新鮮さを感じる事が出来ました。また、プログラム名が「新しい自分」と言いながら、結局過去の自分の記憶が断片的に探し出されていくストーリーはミステリー映画の感じもしなくはありません。
わたしは、ケイト・ブランシェットが大絶賛するほど本作品に正直感動はしなかったのですが、次回作の企画がキャリー・マリガン主演で既に決定しているという事に興味を持ちました。一体、どんな映画が作られるのかこちらにも今から興味津々ではあります。
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