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映画『さらば冬のかもめ』(1973/ハル・アシュビー監督)感想‣不条理に苦しみ、ささやかな抵抗を描くジャック・ニコルソンのロード・ムービー

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映画『さらば冬のかもめ』のあらすじ概要

荒くれた2人のベテラン海軍下士官と、年若い新兵との間に芽生える奇妙な友情を描いているアメリカン・ニューシネマの作品。

海軍士官バダスキーとマルホールは、わずか40㌦の窃盗の罪で8年の刑を宣告された若い水兵メドウズの護送任務に着きます。旅をするうち、3人の間には奇妙な友情が芽生えていきます。バダスキーとマルホールはまだ女性との経験がないというメドウズのために売春婦をあてがってやります。一方、メドウズは途中で出会った娘から脱走を勧められたりもしますが、、、二人に振り回されるメドウズは初めは困惑しつつも次第に心を開らき、一人前の男として自信を持ち始めることになります。

1973年製作/103分/アメリカ
原題:The Last Detail

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映画『さらば冬のかもめ』

ハル・アシュビー監督:『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』(1971年)、本作『さらば冬のかもめ』(1973年)、『シャンプー』(1975年)、『帰郷』(1978年)など、アメリカン・ニューシネマにおいて名を残す傑作を発表し続け、『帰郷』ではアカデミー監督賞にノミネートされています。

ジャック・ニコルソン(ビリー・バダスキー/叩き上げの海軍下士官、血気盛んな捻くれ者だが、親分肌で面倒見の良い部分もある。メドウズに「自由に生きる事」との大切さを教えていく):1958年、『クライ・ベイビー・キラー』で映画俳優としてデビューし、これが「低予算映画の王」として知られる映画監督ロジャー・コーマンの目に留まって、当時の若手俳優や製作者が多数在籍していたアメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ社(AIP)の映画に出演する様になった。ロジャーの映画で共演していたデニス・ホッパー、ピーター・フォンダから誘われ、『イージーライダー』(1969年)に出演した事が大きな転機となっています。

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オーティス・ヤング(ミュール・マルホール/現実的にものを考えるタイプで、やや冷めた物の見方をする。ベトナム戦争への従軍経験がある):

ランディ・クエイド(ラリー・メドウズ/18才の新兵。40ドルを盗んだ罪で懲役8年と懲戒除隊の重罪を言い渡されている。人生経験が浅く、ぼんやりとした性格。恵まれない家庭に育ち、情緒が不安定):

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映画『さらば冬のかもめ』

【ネタバレ有り】

海軍士官ビリー・バタスキーは血気盛んなひねくれ者ですが、親分肌で新米海兵メドウス(窃盗の罪で8年の懲役刑を喰らっています)を、同僚のマルホールと共に軍隊刑務所まで送還する任務に就いています。

1週間もの時間を掛け、勤務するバージニア州ノーフォーク基地からワシントン、ニューヨーク、ボストンという大都会を経て、ポーツマスの海軍刑務所まで護送する任務を負っていました。

窃盗犯はわずか40㌦の金を盗んだ新兵です。しかしながら、募金箱に手を掛けただけでまだ盗んでいませんでしたが、募金マニアの司令官夫人が設置したものだった為、見せしめに重い罪を負う事になりました。

バタスキーらはメドウスから真相を聞くと彼を憐れみ、「パーツマスに行くまでに人生の楽しさを教えてやろう」という考えが浮かびます。そこから罪人と護送者とは思えない3人組の破天荒な珍道中が始まる事になります。

どちらかというと常識派の同僚マルホールと比べて、荒くれ者で人生経験豊かなバタスキーは新兵メドウスの為に良かれと思う一心で様々な経験をさせていきます。一方、人柄は良く、おっとりとして、のんびりしているメドウスは、初めは迷惑がっていた様子を見せていましたが、徐々にバタスキーから感化を受けていきます。訳も分からず飛び込んだ日蓮宗の集会という設定もかなり奇抜で、驚きました!

1週間という限定的な”旅”ですっかり自我が目覚め、旅の最後にメドウスは予想もしなかった大胆な行動に出ます。これこそ、バタスキーが狙った彼に「パーツマスに行くまでに人生の楽しさを教えてやろう」という目論見が大成功した証だと気づかされました。

大した罪でもないのに、8年間の刑務所暮らしが待っているメドウス、逃がして遣りたいけど逃がすと自分の立場がなくなるなど、どうしようも無い「不条理」の中でもがき苦しみ闘っていたのは、最初から最後までバタスキー自身であったのかもしれません。

 

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