『ブルーバック あの海を見ていた』のネタバレ感想・見どころ
本作を観た後に映画解説などを読みました。ミワ・ワシコウスカは現在活動拠点を出身地のオーストラリアに移して活動している事を知りました。映画では底引き網漁業で海底の魚を根こそぎ捉える衝撃的なシーンを目の当たりにしてびっくり仰天、サンゴ礁の海でこれ程荒っぽい漁が実際に行われているとは信じ難いのです。また、冒頭シーンで美しいサンゴの海と多様な魚群の映像に続き、海洋学者アビーが見詰めていたのは骨の様に白化したサンゴの死骸ばかりの海の様子でした。海底の生物を根こそぎにしてしまう底引き網業が諸悪の根源とは思えません。多分地球温暖化の影響で海洋生物の生態系・分布に”異変”が起きているのではないかと思われます。(そこまで突っ込んだ環境破壊についての問題提起は本作にはありません…)
自宅の窓から海洋の雄大な絶景を見渡せるアビーの自宅などがある土地を開発業者が買い取り、”リゾート”にするような構想が描かれていました。アビーの母親も海を守る為、地域住民と一緒に命懸けの抵抗している様子が映し出されます。母親と共に海で育ったアビーの海に対する愛情の深さも大人顔負けでした。特に魚の観察力を発揮して、多くの貴重な魚の絵を描いたり、研究を重ねていました。
本作の見どころは何と言っても西豪州の美しい海岸風景、鮮やかなターコイズブルーの海と水中の豊富な魚類映像です。映画館の椅子に座ったまま、美しい海の中を体験出来ます。(恐らく海の中の映像は上映時間の半分近くではなかったと思われます。気のせいかもしれません)幼いアビーと母親は良く一緒にダイビング(素潜り、スノーケリング)をしていました。海の底で出会う大きな魚ブルーバック(=ウェスタン・ブルーグルーパー)という体長1.7㍍もある巨大魚との邂逅が圧巻でした。ハタの一種です。ブルーバックの生態は不思議です。生まれた時はすべてがメスで、通常一匹のオスがハーレムを作り何匹かのメスと暮らしているそうです。やがてオスが死ぬと、メスの中の一匹がオスになるという何とも摩訶不思議な生態を持っています。
なお、話は脱線しますが、小型のハタは中国の(超)高級食材の一つです。広州・香港の一流レストランの水槽には生きたまま悠々と泳いでいます。以前もかなり高価でしたが、”清蒸石斑鱼”などメインディッシュとしてテーブルに出されますが、ごはんが何杯でもお代わりできそうなとてつもないおいしさです。ブルーバックを見て、肉は美味しいのかなぁと思って見ていたのは多分私だけだと思いますが…
美しい海を母娘で守り切り、ラストシーンでは永年待ち望んだクジラの群が姿を現し、歓喜で迎えます。
『ブルーバック あの海を見ていた』のあらすじと概要
オーストラリアの豊かな海に育まれた母娘の絆を、環境保護のメッセージを込めて描いたヒューマンドラマ。人気作家ティム・ウィントンのベストセラー小説を原作に、「渇きと偽り」のロバート・コノリー監督がメガホンを取っています。
若き海洋生物学者アビー(ミワ・ワシコウスカ)は、母のドラが脳卒中で倒れたとの知らせを受け、生まれ故郷である西オーストラリアの海辺の町ロングボート・ベイに帰郷します。幸いにも症状が軽かったドラはすぐに退院し、美しい海を一望できる高台の自宅に戻りますが、言葉を発することができなくなっていました。母を世話するためしばらく実家に滞在することになったアビーは、環境活動家だった母とこの家で一緒に過ごした少女時代を思い返し、自身の原点を見つめ直していくことになります。
現在、クリーチャー制作技術が劇的に進化し、青い背の巨大魚“ブルーバック”を実寸大で再現し、水深20メートルの海中で泳がせる(操り人形の様に)ことが可能となった為、当初本作品はアニメ作品として構想されていましたが、実写映画として完成しています。
2022年製作/102分/オーストラリア
原題:Blueback
『ブルーバック あの海を見ていた』のスタッフとキャストについて
ロバート・コノリー監督:
ミワ・ワシコウスカ(アビー):若き海洋学者/現在は活動の拠点を母国オーストラリアに移す選択をしています。8歳の誕生日、その日を待ちわびていた母は、アビーをボートに乗せると一緒に海にダイブします。生まれて初めての海でアビーは巨大な硬骨魚類ウェスタン・ブルーグローバーと出会います。
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イルサ・フォグ(アビー青年期):1000人以上のオーディションでアビー役を勝ち取り、15才のアビーを演じた新星。
ラダ・ミッチェル(母親ドラ):環境活動家であり、海洋保護活動を行い、魚類の乱獲業者などに抗議活動を行う。
エリック・バナ(猟師マッカ):ハリウッド映画の常連俳優。しかしながら、本作の製作者で、猟師として出演しています。大作志向から一線を画すかのように母国オーストラリアで映画の製作を続けています。
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