49戦13勝しかできない45歳のプロボクサーが主人公のボクシングストーリーが映画化されるなど誰が期待しただろうか?世の中もっと強いプロボクサーはたくさんいるのではないか。でも彼にはとてつもない家族への思いやりとボクシングに対する誰にも負けない強い情熱を持ち続けていた。この映画はどんなスポーツも1番になること、チャンピオンになることだけが唯一の目的ではないんだよと教えてくれる映画ではないかと思った。
負け犬の美学 の作品情報
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製作:フランス 2017年、上映時間95分
監督・脚本:サミュエル・ジュイ(監督としてのデビュー作、もともと舞台俳優としてキャリアをスタート)フランス映画『クレアの純真』(02)に役者として出演している。
主演:マチュー・カソヴィッツ(スティーブ)⇒ カソヴィッツは『憎しみ』(95)、『クリムゾン・リバー』(00)、『ゴシカ』(03)の監督、『アメリ』(01)、『ミュンヘン』(05)、『エージェント・マロリー』(12)の俳優としても知られているフランス映画界の鬼才として知られている!
出演:オリビア・メリラティ(ユリオン・ランドリー・美人妻)彼女は本編映画の「音楽」も担当している。ソレイマヌ・ムバイユ(タレク・エンバレク、本物のWBA世界スーパーライト級王者)、ビリー・ブレイン(長女オラール役)は「フランス映画かいの期待の新星」と言われており、本編内では尊敬する父親を慕う眼差しと天使の笑顔は正にこの言葉通りで映画に強烈な印象を残している。
お父さんが頑張って、家族が応援するというテーマの最近見た映画は以下があります。
家族を想うとき 映画 ケン・ローチ監督作品 英労働者階級,現実社会の衝撃的な真実を描写
負け犬の美学 のあらまし
最盛期をとっくに過ぎたプロボクサースティーブは時々行われるボクシングの試合やアルバイトをし乍ら奥さんと子供2名を養っている。ボクシングは滅茶苦茶好きなのに、今までの対戦成績は何と49戦13勝3分32敗の成績。ここまで引退せずにボクシングを続けてこられたのは「打たれ強さだけ」と自己分析している。
スティーブはパリの音楽学校に行くことを夢見る娘にピアノを買ってあげようとして、高額の収入が得られるが、生命の危険を伴い誰もが避けたがるヨーロッパチャンピオンの練習相手となることを自ら志願し、コテンパンに打たれてしまう毎日が続く、ある日公開練習に娘が見学に来る。本来であれば余り娘に見せたくない姿を曝け出すことになる。
最終的には練習相手となったヨーロッパチャンピオンとも心が通い合い、前座の試合でスティーブの50戦目(この試合を最後に現役を引退したのかどうかははっきりわからないが…)を戦える事になった。
負け犬の美学 見どころ
ボクシングが好きで好きで一生の職業としたいが、49戦13勝と頗る弱い。それでも引退しないで、生命の危険を賭してまで誰もが嫌がるチャンピオンのスパーリングの相手を務める、図太い神経はどうやって鍛えたのだろうか。家族の為、可愛い娘にピアノを買うお金を稼ぐ為に痛い思いをしてぼこぼこにされる職業を選ぶ人をそれでも「負け犬」というのだろうか? 数多くの批評で本邦での題名「負け犬の美学」そのものに「負け犬」という表現はおかしいのではというクレームが多い事に気づく。多くの感想は本編を実際どの部分を見て同題名が思いつくのか分からないとの意見が多かった。なお、原題は「スパーリング・パートナー」である。わたしも多くの批評と同意見で、勝ち数が少ない、圧倒的に負けているから「負け犬」というレッテルを張る事は可笑しいと思う。
また、妻からは50戦後にはきっぱり「引退」することを迫られている。
ヨーロッパではボクシングの練習も試合も高級ホテルを会場として行われている様なので少し驚いた。選手やスタッフも高級ぼホテルの部屋に泊まり掛けで試合への調整を行っているらしい。
それにしても、現実の世界チャンピオンであるソレイマヌ・ムバイユのパンチはさすが本物だけあって迫力満点、映画の観客すべてが「このパンチの一発でもまともに食らったらスティーブは本当に再起不能になってしまうのではないか」と途轍もない恐怖を感ぜずにはいられない。
そのチャンピオンに、スティーブは試合での対戦相手に対する戦い方を伝授しようとする。ほとんど実績の無いスパーリングのパートナーでしかない男であるスティーブの意見を本気に聞くことが果たして出来るのだろうか?大きな疑問ではあるが、スティーブは何の臆することも無く、自身満々でチャンピオンに戦術を説くところが素晴らしいと思う。
本編映画は華々しいチャンピオンではなく、まったく勝てないプロボクサーに光を当て生き様を描くことに成功した映画と言える。まるでいくら練習しても全く進歩が無い私のゴルフを見る様な気がして、他人事では無いなぁと感じた。
最後に娘役のビリー・ブレインの「天使の笑顔」がびっくりするくらい素晴らしいので是非この映画を見て欲しい。初めは一見”息子”かと思ったが娘らしい、それでもなおめちゃくちゃ素晴らしい…
必見の一作品!
映画のおすすめ度 ★★★★★
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