6才のボクが、大人になるまで。のあらすじと概要
「ビフォア・ミッドナイト」のリチャード・リンクレイター監督が、ひとりの少年の6歳から18歳までの成長と家族の軌跡を、実際に12年をかけて撮影した感動モノのドラマ。
本作品は実際主人公の少年メイソンを演じるエラー・コルトレーンを筆頭に、母親役のパトリシア・アークエット、父親役のイーサン・ホーク、姉役のローレライ・リンクレーターの4人の俳優が、12年間同じ役を演じ続けて完成させています。
第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞ほか計6部門で候補に挙がり、アークエットが助演女優賞を受賞した。
米テキサス州に住む6歳の少年メイソンは、キャリアアップのために大学に入学した母に伴われてヒューストンに転居し、その地で多感な思春期を過ごす。離婚してアラスカに行っていたが、突然1年半ぶりに戻って来た父との再会や母が大学教授のビルと再婚することになり、新しい生活がまた始まります。
最初はビルとその連れ子の二人ともうまく過ごしていましたが、実はビルはひどいアル中で子どもたちにもその被害が出るようになります。メイソンとサマンサは実の父(イーサン・ホーク)と会う事が癒しとなります。ある日ビルの暴力に耐えきれなくなった母は突然姿を消して友人の元へ助けを求めます。メイソンとサマンサは何とか助け出されますが、残されたビルの子どもたちを助けることができず、メイソンとサマンサはつらい思いをします。
その経験から数年が経ち、サマンサとメイソンも思春期を迎えます。二人はそれぞれ恋愛の悩みを持つようになり、父に相談をしたりアドバイスをもらい、いい関係を構築していきます。母のオリヴィアは無事大学で心理学の教員資格を取得しました。大学講師としての仕事のためにまたテキサスへ引っ越すことになり、子どもたちはまたもや翻弄されます。
15歳になったメイソンの周囲は変化し続けていました。父は別の女性と再婚し、赤ちゃんが生まれました。母にも恋人ができ、姉も自分の世界を持つようになりました。母の恋人と合わないと感じていたメイソンは、今の自分の居場所がないと思い、今までも母に振り回された生活にだんだんと嫌気がさして酒やドラッグに手を出すようになります。
高校には通っていますが勉強よりも写真に夢中になっていきます。漠然と将来は写真に関する仕事に就きたいと考えていました。姉のサマンサはテキサス大学に進学し、寮での生活を始めます。メイソンはシーナという彼女ができ、人並みの高校生活を送るようになります。
高校の卒業を目前に控えていたメイソンは写真コンクールで銀賞を取れるほどに写真の腕が上がっていましたが、シーナとの恋愛はうまくいかず、シーナには既に新しい彼氏がいました。失恋をひきずりながらも高校を無事卒業することができました。
母は自宅で卒業パーティーを開いてくれ、父とその家族もお祝に来てくれました。父に失恋の話をしながら、母の元を離れる決意をするメイソン。大学の寮に入ることになったメイソンは、友人たちとハイキングに出掛け、幼かった頃に父といったハイキングのことを思い出し、目まぐるしく変化してきた自分のこれまでに改めて思いを巡らせるのでした。
映画の2時間40分の間、ことさらドラマティックな出来事が起こるわけではありませんが、淡々としたストーリーながら前代未聞の延々12年にも及ぶ年月を掛け、本作品映画が撮影されていきます。このように作品を仕上げようという実験的な挑戦意欲に改めて脱帽せざるを得ません。
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6才のボクが、大人になるまで。ネタバレ感想
ストーリーとテーマについて
6才の少年とその家族全員の12年間に及ぶ”歴史”をストーリーとしている映画。少年はごく一般的な家庭(それでも結構驚くような事は起ってはいるが)で育ち、家族や親類、友達らに囲まれながら、普通の大人に育っていく。映画では各所に”名セリフ”が散りばめられているところも見逃せない。
例えば、
「頑張れ、人生は甘くない」
――6才のメイソンが「ボーリングで柵付きレーンがあればいいのに」とぼやいた時に父親がかけたひと言
「フェイスブックの方が、会話より情報量が多い…」
――思春期に突入した娘のフェイスブックを見た父親のひと言
「どんな人間になりたいか、真剣に考えて。人助けをする思いやりのある人間か、自己中心的なナルシストになるか」
――進路を迷うメイソンに対して、母が語りかけるひと言
「メイソン、何になりたい? 何がしたいんだ? 誰でも写真は撮れる、だが君にしか撮れないものは?」
――アみたいと話すメイソンに、学校の教授からのひと言
まだまだ上げたらキリがありません。一方、毎度毎度何かある度に周囲の人間から「人生の名セリフ」を聞かされたら、頭は混乱してしまうかも知れませんが、、、
母親から注がれる愛情も半端ではありません。二人目のアル中で暴力を振るうようになった父親から子供を守る時の母親は正に”鬼ばば”の形相でびっくり仰天しました。しかし、母親を上回る愛情を注いでいたのはイーサン・ホークが演じた父親ではないでしょうか。大人への過渡期である思春期での父親の重要な役どころを余すところなく120%演じており、父親も自分自身三回位離婚、再婚を繰り返している様でしたが、離れて暮らす息子、娘に対する愛情の強さには驚きます。また、愛情表現も実に上手で、子供からは全体的な信頼を受けている事が良く伝わってきます。これこそが本作品の持つ根幹部分であるように思います。
キャラクタ―とキャストについて
リチャード・リンクレイター監督:ベルリン国際映画祭で監督賞を受賞した95年の「ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離(ディスタンス)」など90年代に頭角を現し、やがてインディペンデント、ハリウッドメジャーの双方で幅広く活躍するようになる。恋人たちのその後を9年ごとに描いた「ビフォア・サンセット」「ビフォア・ミッドナイト」、12年間をかけて少年の成長を撮影した本作品「6才のボクが、大人になるまで。」など、新しい映画製作にチャレンジし続けている。
イーサン・ホーク:2014年公開のリンクレイター監督作本作品『6才のボクが、大人になるまで。』で2度目のアカデミー助演男優賞にノミネートされている。
パトリシア・アークエット:本作品でゴールデングローブ賞映画部門の最優秀助演女優賞や数々の批評家協会賞で助演女優賞を受賞し、アカデミー賞でも助演女優賞受賞。私生活では、95年にニコラス・ケイジと結婚し話題を呼んだが、01年に離婚。
まとめ
何といっても本作品映画の12年間とい長期間の挑戦的な構想そのものに驚きますが、12年間の凝縮された歴史が鮮やかにまとめられており、脚本の見事さと映画作りの監督の力量の凄さを感じた。
わたしの評価は97点。
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