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おすすめ映画|『この自由な世界で』(2007/ケン・ローチ監督)ローチ監督が描く現代の競争社会のありのままの姿!

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「この自由な世界で」のあらすじ・概要

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「麦の穂をゆらす風」でカンヌ映画祭パルムドールに輝いた名匠ケン・ローチ&脚本ポール・ラバティコンビによる人間ドラマ。2007年ベネチア映画祭最優秀脚本賞受賞作品。                                    

ロンドンに暮らすシングルマザーアンジー(カーストン・ウェアリング)は、1人息子のジェイミー(ジョー・シフリート)を両親に預けて働いていた職業紹介所を理不尽な理由で突然解雇される。そこで、ルームメイトのローズ(ジュリエット・エリス)と自分達の職業紹介所を思い切って立ち上げる事にした。もともと合法的な職業斡旋業をやっていたが、不法移民を働かせる方が儲けになることを知ったアンジーは、超えてはならない一線を超えてロンドンで不法移民の人材派遣業を始め、様々なトラブルに巻き込まれていく。

自由市場と呼ばれる現代の競争社会や移民労働者問題を描き出す。自分らの幸福のために誰かを犠牲にすることも辞さないアンジーの姿に、自由という言葉の本当の意味を深く考えさせられる社会派映画の一作!

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「この自由な世界で」スタッフとキャストについて

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ケン・ローチ監督:前作『麦の穂をゆらす風』でパルムドール(カンヌ映画祭最高賞)を取り、まさに絶好調、本作品も、完璧な完成度を誇るもの。複数の国々からの合法的・非合法的な多数の移民を抱える英国の実情を描いているが、新自由主義が世界中に広まった現在、やがては日本にも同じような問題が降り掛かるものと思われる。

カーストン・ウェアリング(アンジー役):最初は移民に対して一生懸命に良い職業を斡旋することに尽力したり、不法移民で職業も住むところも無いイラク人家族を匿ったりしていたが、いつの間にか彼らから搾取する立場の人間に変化してい行く様子が余りにリアルで恐ろしい。

ジュリエット・エリス(ローズ役):アンジーの変化に対してあくまでも自分の立場を変えずに、反対を貫くルームメイト役、やがてアンジーの態度に嫌気がさしていくのではないか?

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「この自由な世界で」のネタバレ感想

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1. 善人であったアンジーがいつの間にか搾取する側に変わっていくところが恐ろしい:
自分自身も職業紹介所に真面目に勤務したにもかかわらず、上司のセクハラもどきの行為に激怒した対応が問題視され、紹介所を辞めさせるられるという仕打ちを受ける。失業を切っ掛けにルームメイトと共同経営の人材紹介会社を新規に立ち上げる。努力の御蔭で業績は上向くが、知り合いの紹介で、もっと稼げる違法移民への仕事を斡旋するようになってから、足をどんどん踏み外してしまうところが問題。経営パートナーであるローズの忠言ももはや耳には届かないし、父親のアドバイスも届かない。『仕事の無い人に、良い仕事を斡旋している』だけとは言いながら、家賃から法外なコミッションを抜いたり、収めてもいない税金分を給料から差っ引くなど、最低賃金にも達していな給料を支払いなど弱者を食い物にする手を緩めない。しかも、不渡りが出たからと言って、4万ポンドもの給料を未払いとなる騒動も解決しようとはしていない。初めの頃は、職業も無く、冬なのに暖房の無い家に住むイラク人家族を、自宅に呼び寄せるという優しい善意を持っていたのにもかかわらず、徐々に自分の利益の為に、不法移民を居住区から追い出すように働きかけてしまう程に変貌していってしまうところに人間の恐ろしさが滲み出ている気がします。

2. 弱者からの搾取による金儲けも余りにも節度を超えると社会的に反発を受けるという教訓:欲に目がくらみ、お金の亡者になり果てたアンジーに対して、嘗ての雇用者一味から、息子の誘拐と強盗という手痛い制裁を受ける事になります。これは自業自得ではないかと思う。身体的な危害を受ける程では無かったのがせめてもの救いとなっています。この後、目覚めて弱者からの搾取は止めたようですが、今後も第二、第三のアンジーが生まれ出てくる可能性は否定できません。

3. 最底辺の人が浮かび上がる為に合法的な手段は残されているのか?  これは非常に問題が大きい、イギリスにやってくる合法移民、違法移民のやってくる 理由は様々である事が分かります。本国では医者や看護師や教師などの定職を持っていながら、イギリ スに脱出せざるを得ない何らかの理由があり、イギリスでは最底辺の仕事で最低賃金での労働について生活費を稼がなければなりません。現実を見ると大変大きな矛盾を感ぜざるを得ませんが、これが実際の現実の姿です。

4. 日本の現状はどうか、この問題を正面から真剣に取り扱っている作品はそれ程多くないのではないでしょうか? 韓国 パラサイト、米国 ジョーカーなどでは不平等、貧困問題等をテーマに数多くの問題提起、告発映画として作られています。日本でも少子高齢化により、近い将来若い労働力は海外からの移民の力に頼らざるを得ない時代が近づいていると思われます。言語の違い、生活習慣の違いで今後、摩擦は当然多くなってくると思います。本作品によるケン・ローチ監督の問題提起がたいへん参考になると感じました。

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最後に

ケン・ローチ監督の手法はいつも、今の社会にはこんな問題があるんだぞ、ひどい世の中だ、さあ皆でどうするか考えろ!と問い掛けてくるので、実際見た後が大変だと思います。何もしなければ何もしないで終わりますが、考えさせられることが多いような気がします。

 

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