『天使の分け前』のあらすじと概要
イギリスの名匠ケン・ローチが、カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したドラマ。スコットランド、グラスゴーを舞台に、恋人や家族、一般社会から見放されていた青年らが、社会奉仕活動を通じて、信じられる仲間を得たことで前向きになっていく姿を、笑いや涙を交えて描くヒューマンドラマ。古い因縁のある知り合いとのしょっちゅうケンカの絶えない人生を送るアウトローのロビー(ポール・ブラニガン)は、恋人レオニー(シボーン・ライリー)や生まれてくる赤ちゃんのために人生を立て直そうとするが、なかなかまともな職に就けず、またも幾度となくトラブルを起こしてしまう。服役の代わりに社会奉仕活動を命じられ、そこで3人の仲間と出会ったロビーは、奉仕活動指導者でウイスキー愛好家のハリー(ジョン・ヘンショウ)からスコッチウイスキーの奥深さを教わる機会を得て、自分にテイスティングの才能があることに気づかされる。仲間とともにオークションで1樽100万ポンド以上の値の付くビンテージ最高級ウイスキーを巡り、人生の転機を懸ける作戦を開始する。
「天使の分け前」とは、ウイスキーを、樽の中で熟成のときを重ねる間に、樽のすき間から少しずつ蒸散し、だんだんとその量を減らしていきます。その割合は年間2%から4%とも言われ、樽の中には長い間に大半がなくなってしまうものもあります。昔のウイスキー職人たちは、「これはきっと天使がこっそり飲んでいるに違いない。でも、天使に分け前を与えているからこそ、天使の助けもあって美味なるウイスキーが出来上がるのだ」と考え、減ったウイスキーのことを「天使の分け前(Angel’s share)」と呼んできました。(山崎蒸留所 ニュースより)
『天使の分け前』のスタッフとキャストについて
ケン・ローチ監督:英ウォリックシャー州出身の巨匠。
ポール・ラバーティ(脚本):本作品以外に、『家族を想う時』(19)、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(17)、『ジミー、野を駆ける伝説』(14)、『麦の穂を揺らす風』(06)等々多くのケン・ローチ監督作品の多数の脚本を担当している”盟友”である。
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ポール・ブラニガン(ロビー役):人気のナインティナインの岡本によく似た感じの若者、映画初出演とは思えない演技力! どうにも手をつけられない不良青年役だが、良い指導者に巡りあい自分を生かす道が漸く見つかる。
『天使の分け前』のネタバレ感想
巨匠社会派ケン・ローチの温かい目は今回、アウトローの青年たちへ向けられます。一歩間違えば、刑務所送りになってしまう最底辺で生きる人間たちです。誰が見てもこの街に住んでいる限り、因縁のあるグループに纏わりつかれ、まともに生きていけそうにないので、義父のアドバイスに従って他の土地で新しい人生を見出せばと良いとも思われるのですが…
主人公ロビー(今回映画初出演のポール・ブラニガン)はたまたま持って生まれたウイスキーのテイスティングの能力を見出され、最後には目出度くウイスキー作りの会社に雇われる道を見出す事が出来ました。これには、奉仕活動指導者でウイスキー愛好家でもあったハリーの存在は大きいと思われます。
当初、ロビーの子供を生んだ恋人レオニーが彼の様な危なっかしく、定職にもついていない男に良くついて行くものと不思議に思っていましたが、根は決して腐っている訳ではなく、何かの更生の切っ掛けがあればきちんと人生を歩める人間であると彼の本質を見抜いていたのだろうと思いました。そうでなければ、彼に引かれる魅力を感じるところはありません。或は母性本能でやさしく守ってあげたいと思うのならば別ですが、現実的にはそれはあり得ないと思います。
本作品映画中で少し気に掛かったのが、新たに発見されたビンテージウイスキーのオークション会場に忍び込み、深夜、その樽からウイスキー瓶4本分を抜き取って(これを『天使の分け前』と拡大解釈しているのでしょう)、これを転売しています。2本分は瓶を割ってしまいましたが…この行為は明らかに犯罪行為です。これを新たな更生への足掛かりにするというストーリーは果たしてOKなのでしょうか?そんな堅苦しいことは言わず、ひと樽の内のボトル4程度は『天使の分け前』の様なものなので、問題無いという太っ腹解釈の映画なのでしょう!
最後にお世話になった指導員のハリ―に盗んだ極上のウイスキーを一本プレゼントしますが、果たしてハリーはどんな気持ちでこのウイスキーを飲むのか少々気になるところです。
最後に
一樽100万ポンド以上も値の付くビンテージウイスキーは一生口にする機会は無いと思いますが、それでもどんな味がするのか大変気になります。映画中ではボトル2本を割ってしまいましたが、実に勿体無い話です。1本10万ポンド(1400万円)!
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