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北海道十勝岳(2077㍍)登山 〜小心者であることを露呈した単独山行の思い出〜

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旅の随筆
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Thanasis PapazachariasによるPixabayからの画像

麓の白銀温泉に前泊、十勝岳登山口へは望岳台までは車道を3㌔程登ると到着します。白銀(しろがね)温泉は以前参加した『美瑛ヘルシーマラソン・ハーフコース』のスタート地点になっているので、ここまでバスで来たことがありました。それより以前にもう一回来ていました。学生の頃、まだ『国設十勝岳スキー場』があった時代にスキーを滑りに訪問した事がありました。十勝岳スキー場の雪質は抜群、しかも雄大なゲレンデにスキーヤーの姿をほとんど見かけることのない、ちょっと不人気なスキー場だったのでよく覚えています。(近場に有名な富良野スキーがあったのでそちらにほとんでのスキー客は獲られてしまったのかもしれません)

当時(1980年)札幌の映画館で、公開されたばかりのスタンリー・キューブリック監督の名作ホラー『シャイニング』を観賞した直後だったので、十勝岳の雪景色がシャイニングの映画の冒頭シーンの光景と、すっかり重なり、かなりの恐怖感を覚えたのを記憶しています。

10数年前の十勝岳登山で、宿泊したカミホロ荘には渓流沿いの露天風呂がありました。その温泉の源泉の湧水量(噴出量)が半端ではなく、湯船の中に川同様にお湯が激しく流れていました。うっかりその流れに身を任せようものなら、大人ですら、水圧で身体ごと真下を流れる渓流まで押し流されてしまう程の凄まじいものでした。小さな子供は親が抱えていないと、流れで押し出されてしまうかも知れませんでした。(最近のカミホロ荘のHPを見ると建物は新装され、温泉も写真を見る限り内湯のみ!?という昔の野趣溢れる温泉の風情は無くなっている感じを受けました。実際に現地に行って確認したいものです)

十勝岳登山は、ガイドブックによると望岳台から往復6時間強の歩程でした。一本ルートの為、道に迷う事も無いという程度の前知識で登り始めました。既に夏山シーズンも終わり、紅葉の季節まではまだ早い時期の為、他の登山客を殆んど見掛けませんでした。もっとも、雨こそ降っていませんでしたが、早朝からかなりの強風は吹き荒れていた為、悪天候を嫌った地元ハイカーはその日の登山を敬遠したものと思われました。

目安になっていた避難小屋までは丁度小1時間。強風の中、立っているのも大変で、身を屈みながら漸く辿り付きました。小石が飛び飛ばされるほどでは無かったので、避難小屋は通過し更に先に進みました。風の逆巻く音が、まるでヒグマの咆哮の様に(グッワァ・グッワァと聞こえました)聞こえて来る為、あたりにヒグマの姿は無いか何度も立ち止まり観察しました。

更に登山道から左手に広がる噴火口らしき光景が地獄の様な恐ろしい景観で、びっくりしました。風も強く、息をするのも苦しい程だったので、これ以上登るのを、そこできっぱりと諦め、わたしは登って来た道を引き返しました。

足早に15分から20分程下った所に先ほど通過した避難小屋がありました。避難小屋から30分以上掛けて登った道を引き返した事になります。そこで小休止しながら、東京からわざわざ来たのに十勝岳のピークを踏まず帰ることに無念さを覚えました。

ところが、下山口に向かおう立ち上がると、風が幾分弱まった事に気が付きました。結局あれこれ一時間程度時間を無駄にしたことになりますが、何とか思い直し、避難小屋から再度登り始める事にしました。優柔不断の極みではあります。一度撤退の決断をしながら、風が弱まったので再度勇気を持って登り直し始めました。

強風はどうやらピークを過ぎたようでした。しかし、相変わらず噴火口(昭和噴火口)は不気味な雰囲気で立ちはだかり、とても晴れやかな気分で登れる山ではないという思いは変わり有りませんでした。

更に登って行くと、今度は、予想もしていなかった「ポン」という噴火する音が山頂方面から轟いて来ました。この噴火はいつも日常的に起こっている現象なのか、それとも今日は特別に噴火しているのか、事前情報は何も調べてこなかったので、かなり不安を抱え乍ら更に上を目指し登って行きました。

その後、グランド下火口、擂鉢火口など命名されている個所も見えてきましたが、兎に角、立ち止まる事無く、ひたすら頂上を目指し、足早にノンストップで駆け上りました。

何年後かに登った木曾御岳山も山容は活火山そのもので、登り始める前から異様な雰囲気に呑み込まれたのを覚えています。わたしが登った何年か後に、やはりわたしが感じていたように大爆発を起こし、大惨事となりました。TVニュースの映像を見て肝を冷やしました。

途中の1800㍍付近だったと思われますが、この日唯一の単独行の登山者とすれ違い安堵しました。挨拶を交わす程度でしたが、登山者の姿を見た事で、勇気百倍、ここから上に行っても問題は無いと確信することが出来ました。

なおも、噴火の継続と何となく漂う硫黄の臭い、火山灰にまみれた登山道を必死に登り、ピークに辿り付く事が叶いました。ガスが垂れ込めている為、視界はゼロ、山頂の標識にタッチした瞬間、休憩することもまったく考えることなく、文字通り、脱兎の如く下山を急ぎました。

一応、深田百名山の内の一つなので何とか登りましたが、噴火している山岳を登るのはあまり気持ちの良いものではありません。同じ「百名山」の一つ北アルプス焼岳も頂上付近の地面の温度が文字通り熱く“焼けているよう”だったのを思い出しました。マグマの熱を頂上の地面に体感出来てしまう山の登山もあまり気持ちの良いものではありません。

なんともしまりの無い登山レポートですが、特に”活火山”登山の場合は事前に最新情報をしかるべきソースから入手しておいた方が、余計な心配をぜずに済むのではないでしょうか! 注意したいものです。

 

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