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小説『リバー』奥田英朗(おくだ・ひでお)著(集英社)感想‣人間の業と情を抉る無上の群像劇×緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説! 何もかも忘れて没入出来る小説です!

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『リバー』の概要

同一犯か? 模倣犯か?
群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで2名の若い女性の死体が発見される!
十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。
かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。
十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか───本書表紙”帯”より転載。

地域的には北関東の群馬県、栃木県、その地域を流れる渡良瀬川の河川敷が舞台となっています。自動車メーカー、自動車部品メーカーの工場が立ち並び、それぞれの工場は多くの期間工を抱え(日本人以外に、中南米系の出稼ぎ労働者も多い)独特の地域社会を形成されている背景も大変興味深く詳細に描かれていきます。

登場人物は非常に多いですが、それぞれの個性、状況も仔細に描写されているので、人物を理解し、感情移入することはとてもし易くなっています。

600ページ超えの力作乍ら、トルストイの「戦争と平和」の様に人物相関図を片手に逐一誰だっけと確認をする必要は無かったので、ある程度すらすらと読むことは出来ました。

10年前に2人の若い女性が殺害され結局犯人を逮捕する事は出来ませんでした。10年の年月が経ち再び同じような手口で更に2名の若い女性が殺害される事件が発生します。そして、驚くべき事に更にもう一人の女性が犠牲になります…

犯人の目星は3名の濃厚容疑者が浮かび上がります。それぞれ怪しいものの確証が掴めないまま、推移して行きます。小説の半ばあたりでこの人物が真犯人ではないかとは想像がつくのですが、最後の50ページまではまったく確信は得られませんでした!

『リバー』の感想【ネタバレ無し】

600ページ超でまず、本が重たくて読むのがたいへんな事はたいへんですが、展開がとても面白いので頑張って読むことが出来ました。登場人物が懇切丁寧に描かれているので分かり易い内容になっているのも特徴。

一番の大手柄は娘を殺された写真店のお父さんの10年間にわたる、河川敷で継続された不審者の”捜査”活動ではないかと思いました。本人が写真屋という事もあり、犯人は現場に戻って来るという言葉を信じて、地道に不審車両・人物の撮影を来る日も来る日も繰り返していました。その執念はやがて実る事になります…余り説明するとネタバレになるので止めます。

また、警察を定年退職した捜査官(10年前の事件では犯人を逮捕する事が出来なかった。但し容疑者としてほぼ間違いない人物を割り出しますが、証拠不十分で取り逃がしている苦い経験がある)が再び現場で捜査に”協力”するという役割で登場します。やはり長年培った現場での情報網、捜査の勘、当に命懸けの捜査は真犯人逮捕に結びつく事になります。殺され掛けて、自分の埋められる穴まで掘られながら生還しています。これは良かった。

欲を言わせてもらえるならば、犯人の犯行の動機部分をもう少し詳細に描いてもらった方が、犯人像の厚みが出たのではないかと感じています。生まれ育った環境などは詳細説明があり分かっているのですが、援助交際という行動に出る若い女性を次々に毒牙に掛けています。そこに至る心理描写、犯行動機を明確に理解することは出来ませんでした。

『リバー』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

読書メーターなどから一般公開されている読後感想を抜粋させて頂きました。総じて、好意的な意見が多い様でした。

面白かった。奥田作品に良く描かれる地方都市の様相に頷き、そこで生きる人々の気持ちに共感しながら読みました。殺人事件の真相解明を追う人々の奮闘する姿に、前向きな気持ちにさせられました、

本作は、警察、遺族、記者という、立場は違えど目的を共有する三者が、それぞれ探り当てた小さな小さな点を共有し、細い糸を繋ぐようにしてようやっと真相にたどり着く、そんな話でした。
現実世界でこの三者が連携することなどないのかもしれません。
でも、こうだったらいいのになと思わされます。ご意見いろいろあるようですが、私はいい終わり方だったと思います。かなりの厚さですが、一気読みでした

最後に

TVなどで外国人の割合が多い町として群馬県の大泉町が取り上げられることが多いです。人口の20%が外国人、その半分がブラジル人!ブラジル以外に45か国もの外国人が住んでいるそうです。コロナ感染以降状況は多少変化しているのだと思いますが、それにしても異常な環境だと思います。大企業(SUBARUなど)やその協力工場が進出し、積極的に全世界から採用している労働者が集まっている様です。

本作では北関東の町の世相も十分に書き込まれた内容になっており、大変興味深く読む事が出来ました。

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