『あるスキャンダルの覚え書き』のあらすじと概要
アメリカで実際に起こった事件を基に、41歳の陶芸教師と15歳の教え子の禁断の愛を描いたゾーイ・ヘラーによる同名小説の映画化。2人の愛とその終焉が、事件の当事者で逮捕された41歳の美術教師シーバ(ケイト・ブランシェット)の同僚で親友のバーバラ(ジュディ・デンチ)によって語られていきます。
厳格な女教師バーバラは、新任の美人教師シーバのクラスの騒ぎを治め、彼女と親しくなります。ところが、人妻であるシーバと15歳の生徒の密会を目撃してしまいます。彼女の弱みを握ったバーバラは、シーバが打ち明けた情事を克明に記録しはじめますが、その日記は後々シーバの目に留まる事になります..家族も親しい友人もおらず、飼っている猫だけが心のよりどころだった孤独な年配女性の屈折した愛情が、徐々に明らかになっていくストーリー展開から一瞬も目が離せません。
監督はジュディ・デンチ主演「アイリス」のベテラン、リチャード・エアー。06年度のアカデミー賞ではデンチ、ブランシェットが、それそれ主演女優、助演女優賞にノミネートされた作品です。
『あるスキャンダルの覚え書き』のスタッフとキャストについて
リチャード・エアー監督:1943年生まれ、イギリスの舞台演出家、映画監督。
ジュディ・デンチ(バーバラ):1934年イギリス・ヨーク出身。「恋におちたシェイクスピア」(98)でアカデミー助演女優賞を受賞した。「007/ゴールデン・アイ」(95)以降のシリーズでM役を務めているほか、「眺めのいい部屋」(86)、「ショコラ」(00)等に出演。
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ケイト・ブランシェット(シーバ):1969年生まれ、オーストラリア/メルボルン出身。イングランド王女エリザベス1世を演じた「エリザベス」(98)が批評家に絶賛され、アカデミー主演女優賞に初ノミネートされる。以降アカデミー賞に多数ノミネートされている。受賞は2回の実力派女優のひとり。
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ビル・ナイ(リチャード):1949年、イギリス/サリー州出身。リチャード・カーティスの「ラブ・アクチュアリー」(03)で注目を浴びる。「アンダーワールド」シリーズ(03、06、09)や「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」(06)のデイビー・ジョーンズ役など大作での起用も増えている。
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『あるスキャンダルの覚え書き』のネタバレ感想
【ネタバレ有り。要注意!】
屈折した感情を持つバーバラのストーカー的な執着心にはぞっとさせられました。スポットライトは教師と教え子とのスキャンダルではなく、バーバラのシーバに対する押しかけ的な愛情表現に当てられています。
孤独な女性がささやかな慰めを欲する為に、お互いに強い友情で結ばれ合う同性を求めるのも多少は理解は出来ますが、バーバラのこだわりはやはり偏執的と言わざるを得ません。このストーリーが実話をベースにしているという事もあり、ちょっと怖い話だなぁと思いました。実話では二人は結婚し子供も産んでいる様です。
一方、バーバラの”恋”の対象になってしまった新任教師のシーバの魅力も満載でした。40歳前後で結婚して子供もいる美術教師役です。セントジョージ総合中等学校の担任教師の中では際立つ美しさで、且つ、天真爛漫、同僚男性教師は当然の事乍ら、男子生徒からも好意を持たれるのは極めて自然なのかも知れません。当然の事乍らバーバラも目を付けます。
また、とんちんかんな男性同僚教師がバーバラの家を訪ね、シーバが少しはその男性教師に気はあるかどうかバーバラに尋ねに来ます。これはバーバラがシーバの秘密をばらす伏線になっていました。しかし、この部分だけは事実と異なるのではないかと疑いたくなります。「事実は小説より奇なり」ということもあるので、こんな教師が実在していたのかもしれません。
やはり、圧巻はバーバラ役のジュディ・ランチの演技のすばらしさ。誰が見ても変質者で、非常に心まで腐ってしまっています。シーバが自分の大切にしていた猫の”処置”への同行を断って、息子の学芸会に行ってしまうと、即ブチ切れて、スキャンダルをバラシしてしまいます。この事は、取り返しのつかない結果をもたらします。
恐らく映画観客全員から総スカンを喰い、怨嗟の声が聞こえて来ても不思議ではありません。しかし、彼女がそういう態度に出ざるを得なかった心情を観客に分からせる説得力、また同情を誘うような演技力は確かに物凄い凄みがありました。
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