『ルート・アイリッシュ』のあらすじと概要
「わたしは、ダニエル・ブレイク」の名匠ケン・ローチが、実在する危険地帯を題材にイラク戦争の実態を痛烈な批判を盛り込みながら映し出した2010年製作の社会派ドラマ。2003年の米軍によるイラク侵攻後、バグダッド空港と市内の米軍管理地域グリーンゾーンを結ぶ12キロにおよぶ道路「ルート・アイリッシュ」は、米軍の要人を狙ったテロが多発する世界一危険な道路と言われていた。イギリス人の民間警備兵ファーガスは多額の報酬にひかれてイラクにやってくるが、ルート・アイリッシュで親友のフランキーが死亡する。その死因について当局の発表に納得がいかずに真相究明に乗り出す。
国家に属する軍や兵士ではなく、ごく私的な企業の民間兵によって泥沼化した戦争だったとケン・ローチ監督は指摘します。「これは戦争の民営化と言える。企業が利益を優先するあまりに起きた悲劇だった。」こういう“戦争の民営化”という視点は、これまでの戦争では意識されてこなかったことなんだ」と語気を強める。さらに、「一番重要な点はイラク戦争が“違法”だったということ。あれは紛れもなく悪意に満ちた戦争犯罪だった」と痛烈な批判を込めた。。(出典:映画.COM インタビューより)
なお、イラク戦争の違法性に関するギャビン・フッド監督の最新映画の感想投稿記事はこちら:
感想|『オフィシャル・シークレット』(上映中/ギャビン・フッド監督)キーラ・ナイトレイ主演でイラク戦争にまつわる国民を裏切る政府の不正を告発(実話)
戦争犯罪と事件を背景にしており、親友を亡くした男の怒りと悲しみ、罪悪感など、さまざまな感情によって展開する謎解きが物語の主軸となっています。「主人公のファーガスは絶望的な状況にいる。どこにも逃げ場なんてない。自分の決断や行いによって苦しみ続けているんだ。これは取り返しのつかない悲劇の物語だから、ラストもあれほど辛らつにならざるを得なかったんだ」とケン・ローチ監督はインタビューで自ら語っています。
『ルート・アイリッシュ』のスタッフとキャストについて
ケン・ローチ監督:一番重要な点はイラク戦争が“違法”だったということ。あれは紛れもなく悪意に満ちた戦争犯罪だった。と、痛烈な批判を込めて本作品を撮ったと語っています。
ローチ監督がスター俳優を起用することは稀、今作でも長編映画デビューとなるマーク・ウォーマック(民間警備兵ファーガス役)、アンドレア・ロウ(友人フランキーの妻役)ほか実力派中堅俳優がキャスティングされています。「
”マークは経験豊富な俳優だし、アンドレアもとてもプロフェッショナル。僕は俳優を見に映画館に来るのではなくて、彼らが演じているキャラクター、ストーリーを見に来てほしいんだ”とその理由を語る。
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『ルート・アイリッシュ』のネタバレ感想
アメリカとイギリスで不法な戦争を仕掛け、しかもイギリスは民間軍事会社・コントラクターに戦争の下請けをさせていているという事実に唖然とさせられた。イラク民間人犠牲者の殺人事件をもみ消す為に、不法行為を暴こうとした社員(傭兵)をわざわざ危険ルートである『ルート・アイリッシュ』に何度も派遣し、テロにわざわざ巻き揉まれてるようなことまで仕組んでいる事をケン・ローチ監督は怒り心頭の様子が分かります。社会の巨悪に挑戦しているエネルギーに凄まじいものを感じますが、ストーリー展開については主人公ファーガソンが時々切れまくるシーンもありますが、紳士の監督らしく、落ち着いた雰囲気で真相解明に着実に一歩一歩近づいて行く展開は流石だと思います。
ラストに民間軍事会社の経営者ら(若い秘書の女性は巻きぞい)自動車に仕掛けられた爆弾で爆殺されて終結されます。ここにケン・ローチ監督の気持ちは集約されているのだと思います。真の巨悪の権力に立ち向かうテロ行為の是認!『必殺仕置き人』の中村主水と言ったらお叱りをうけそうですが、、、
しかしながら、ケン・ローチ監督の映画はそれで、一件落着とはなりません。主人公ファーガソンのもやもやした悩みは解決することなく、最後には入水を選択して果てる事になります。何とも遣り切れない幕切れです。
たぶん、イラク戦争では、知らないところでイラクでは多数の民間人を巻き込んだ悲劇が発生しているに違いありません。戦争による死者は50万とも65万人とも言われています。その犠牲者の7割は民間人だそうです。こんな理不尽な事が実際起きている事は、知らなかったではもはや許されることではありません。
やはり、違法な戦争を開始した責任は糾弾されるべきではないかと思います。
最後に
傭兵という言葉がありますが、戦争の「アウトソース」一か月1万ポンド(約140万円)支払われるという会話が映画の中で交わされていました。命懸けで働いてこの程度かとも思いますが、いやな職業だと感じます。
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