はじまりのみち の作品情報
監督:原恵一 代表作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』『河童のクゥと夏休み』、実写初監督作品。(1959年群馬県館林市出身、現在はフリーランスの日本のアニメ監督。怪物くん、フクちゃん、ドラえもん、クレヨンしんちゃん等多数のアニメを手掛ける)
出演:加瀬亮(1974年生まれ、横浜出身、父親は総合商社双日代表取締役社長、会長を歴任した加瀬豊。石井聰亙監督の『五条霊戦記』で映画デビュー、熊切和嘉監督『アンテナ』で映画初主演。その他『硫黄島からの手紙』(06)、『それでも僕はやっていない』(07)等多数。田中裕子(1955年大阪府池田市生まれ、明治大学文学部演劇科卒、1979年NHK「マー姉ちゃん」で主役の妹役でデビュー、81年映画『ええじゃないか』『北斎漫画』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。83年『おしん』で主役を演じる。アジア・イスラム圏中心に世界的女優となる。なお、『おしん』の平均TV視聴率は52.6%、ユースケ・サンタマリア(1971年大分県大分市出身)、濱田岳他
製作:2013年、日本、上映時間 96分
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はじまりのみち のあらまし
『二十四の瞳』『楢山節考』など数々の名作を残し、日本映画の隆盛期を支えた名匠・木下惠介監督の生誕100年記念作。木下監督の若き日の挫折と再生のストーリー。
1945年、木下恵介は陸軍省から依頼された映画「陸軍」のラストシーンが「女々しい」とクレームを受け、次回作をキャンセルされてしまう。木下恵介は所属していた松竹に辞表を提出して故郷である浜松に帰ってしまう。
しかし、浜松は空襲を受けた為、病気療養中の母・たまと共に親戚を頼って田舎に疎開することになった。たまは体の容体が良くない為、バスに乗ることが出来ず結局60㌔の道のりをリヤカーに乗せて運ぶことになった。
兄・敏三、荷物運びの便利屋と4名での夜中に出発し、疎開先に向かった。道中、雨に遭うが、雨雲身に付けず悪路を必死に進んでいく。夕刻一行は山中の宿泊予定地である気田に到着する。途中から乗車する予定であったトロッコは翌々日にならないと出発しない事が分かった為、便利屋は帰ると言い出し始めるが、宿屋の若い娘と仲良くなったため、何とか一緒に行くことになった。
翌日恵介は外出すると、出征兵士を見送る小学生やその教師の姿を眺めたり、河原にやってきた便利屋が、リヤカーで母親を運び抜いた恵介を見直したことを正直に語る。また、便利屋がたまたま観た映画「陸軍」(木下恵介が監督として撮影した映画である事は知らない)のラストシーンの母親の姿に感激した話をする。
疎開先に漸く到着すると、母・たまは病気が快復せず口が不自由であった為手紙を渡す。そこには「あなたはここにいるべきではない。木下恵介の映画が見たい」と書かれていた。
はじまりのみち の見どころ
木下恵介監督は本当に温かい家庭に囲まれて育ったんだと感じた。本編映画の前半はひたすら病気の母親をリアカーに乗せて兄弟と力を合わせて山越えをシーンに費やされるが、大変長い移動なので母親の病状が悪化してしまうのではないかとはらはらさせられた。
17時間を掛け、大雨の中リヤカー2台で峠越えをする。そんな中、病弱で口が不自由になった母親たまからとどたどしい字体の手紙をもらうが、また、木下恵介の映画が見たい訴え掛けられる。一度は陸軍からの物言いが入り映画作りに嫌気がさして松竹の映画監督を辞職して実家に戻ってくるものの、母親からはお前のいる場所はこの家ではないと諭される。
単純なストーリーといえば、かなり単純な内容の映画とも言える。また、最後には木下恵介の代表映画の懐かしいシーン(いずれも50年、60年代の代表的な映画が大部分)が流されるが、これらのシーンは本編映画と対照的に溌剌とした明るいシーンばっかりのような気がする。
戦争中と戦後の時代背景が映画のシーンの中から十分伝わってくる。なお、各名場面は木下恵介が一時退職後、疎開中に遭遇する数々の想いでのエピソードがしっかりと自分の後の映画作品の中で再現されている事になるのが見もの。
クレヨンしんちゃんのアニメ映画監督の初実写映画作品と聞き大変興味深く見たが、一瞬「拍子抜け」するくらい極めて普通の映画に撮られていた事に少しばかり驚きを感じた。クレヨンしんちゃんのアニメ映画監督らしさは微塵も感じさせない。
木下恵介の兄役で出演しているユースケ・サンタマリアの個性を殺した抑えられた演技がとても印象に残った。
木下恵介監督の人となりの育った生活環境、家庭環境の背景や数々の多くの有名作品が生み出される源泉がここにあった事が十分理解出来る映画と言える。
木下恵介監督を作品からだけではなく、また違った側面から理解する意味では
おすすめ度★★★★
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