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おすすめ本|『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』 後藤逸郎著 文春新書

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おすすめ本の紹介
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なぜ「オリンピック・マネー」を読んだのか?

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世界中から注目される「スポーツの祭典」の開催する国際組織IOC(国際オリンピック委員会)についての知られざる裏側を紹介しているということなので、興味を引かれ読んでみた。IOCの真実は飛んでも無い事になっていたので、びっくり仰天しました。この一部を是非ご紹介していきたいと思います。

なお、最近のコロナ禍問題による、東京オリンピックの1年延期については既に合意されていますが、IOCとの契約では、その費用は日本が負担することが決まっているだけで、その追加費用はいくらになるかまだ確定していません。

「どれぐらいのコストがかかるのか、現時点では明らかになっていない。誰が、どのくらい払うかも議論されていない。まだ追加費用、負担が決まっていない、積算されていない」と一部報じられていますが、実際は日本が負担せざるを得ない状況の様です。

このように、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長は4月23日のインターネット会見で追加費用について見解を示した、とメディアが伝えています。

追加費用が不明なまま、延期を決めたことが明らかですが、武藤氏の発言内容は問題です。要は日本政府もIOCも、いくら費用がかかるか不明なまま、オリンピック延期を決めた事実を大会の責任者が認めたことは大問題だと思います。オリンピックの興行主として特権を持つ IOC 、オリンピックのためなら税金を湯水のように使える日本政府!?に関しては、本書 後藤逸郎著『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』の中詳細が語られています。

そのひとつ、IOC の特権とは、オリンピックの開催都市との契約で、IOCは一切、財政負担を負わないことを明確にしています。組織委や開催都市が赤字になれば、政府が債務保証するよう求めており、実際に日本政府は IOC に債務保証しているそうです。本書「オリンピック・マネー」で、そのカラクリや他にテレビ放映権料などの巨額の収益メカニズムの詳細が書かれています。

なお、IOC と東京都が結んだ開催都市契約「66.契約の解除」には、 IOC に大会中止の権限があると定めているそうです。戦争や内乱などが例示され、新型コロナのような疫病は明記されていませんが、「IOCがその単独の裁量で、本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」に中止できるとする。「本大会が2020年中に開催されない場合」もIOCが中止を決める。

もともと、IOCの選択は2020年に開催するか、中止するかの2つの選択肢しか眼中になかったという事らしいです。安倍首相がバッハ会長との電話会談で延期を取り付けたのはギリギリの交渉だったそうで、延期の代償に、安倍首相が追加費用の日本負担を飲まされたことは十分ありえることだと述べています。

中止ではなく、一年間の延期は諸手を上げて歓迎すべき事なのかもう一度冷静に考え直す余地は無いものなのか、色々考えさせられる書でした。

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高騰する放映権の問題について

オリンピックの商業的価値の最大的引き出しを開始したのは1984年ロサンゼルス大会からで、前回モントリオール大会が巨額な赤字だった為、公費負担はしないと公言されていた同大会は民間運営で黒字化に導かれた。この裏にはテレビ放映権の引き上げや、一業種一社のスポンサー限定など、現在のIOCが活用するロールモデルが開始されました。

また、IOCが設立したいくつかの関連NPO財団が存在し、さらにその下部にはオリンピック・チャンネルサービス(株)、オリンピック・ブロードキャスティング・サービス(株)(OBS)などがあるが、このOBSは最も巨額な金を動かしている。IOCが出資する事業体で、大会競技を撮影・中継し、各国テレビ局を通じて配信している。2020年東京大会のマラソンと競歩の競技会場の札幌移転問題で、小池百合子東京都知事がスタート時間の前倒しをIOCに逆提案した際、IOCが、レース展開のヘリ中継が困難と即答したのもこの会社だそうだ。

IOCはオリンピック開催都市と契約を結び、テレビ放映権などオリンピックに関する「すべての権利」「将来開発されるもの」を「全世界を通じて永久にこれを所有する」と厳密に規定されています。

各国の開催都市がOBSに支払っている放送権料は一大会あたり数百億円と巨額だ。このOBSとIOCの役員構成はほぼ重なるとのこと。

その後も放映権の高騰傾向は続き、1995年には2000年のシドニー大会、02年のソルトレークシティ大会を12億五千万㌦で米NBCが一括契約している。更に4か月後04年アテネ大会、06年トリノ大会、08年北京大会の3大会を23億㌦で契約を果たしている。これはスポーツ大会では史上最高金額とのこと。

更に、話は先に触れた新型コロナウイルス発生の問題で東京大会の一年延期が決まる以前は、IOCは「東京五輪大会を中止するかどうか、IOCは5月末まで判断する可能性がある」と伝ていました。これは、いきなり開催中止であって、延期という選択肢は当初ありませんでした! IOC側は延期して「10月にやるとは言えない」理由としては「テレビ中継の問題」を挙げ、秋にはプロと大学のアメリカンフットボール、ヨーロッパのサッカー、さらにはバスケットボール、野球、アイスホッケーなど、放送スケジュールが満杯で北米のテレビ局を満足させられないという問題を抱えていた事が大きな要因だったそうです。

東京大会延期の為に掛かる費用はいくらに増えるかはまだ未定の状況ですが、著者の予測では中止よりも多くなることは間違いないとの事です。

なお、裏側の話て高額なスポンサー料、新国立競技場には聖火台が設計に盛り込まれていなかった、神宮外苑再開発プロジェクトの進行等々多くの問題が明らかにされています。

世間の一般的な意見はどんなものがあるか

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一部読者の感想を引用します。

オリンピックに関するお金の話。もはやオリンピックは純粋なスポーツの祭典ではなく、胡散臭さの祭典にしか見えない。経済優先の世の中が屁理屈を理屈にしていく姿が明確に見える。

東京五輪招致時、東京都知事の猪瀬直樹はTwitterで呟いた。「誤解する人がいるので言う。2020東京五輪は神宮の国立競技場を改築するがほとんど40年前の五輪施設をそのまま使うので世界一カネのかからない五輪なのです」数年後、旧国立競技場は当たり前のように取り壊され新国立競技場が作られた。

国民はどれほどこの事実を覚えているだろうか?オリンピックは「平和の祭典」の名のもとに予算は肥大化、やったもん勝ちである。私の意見はアスリートファーストよりも、まずは常識ファースト…

同じ作者のおすすめの本はあるのか?

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特に著作の残念ながら記録はありません。

最後に

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純粋なスポーツの祭典が完全な商業主義の金儲けの手段に使われているのが実態であることが良く分かりました。一方、今大会の東京都の目論見も五輪大会の招致を起爆剤として一層の経済発展、雇用の増大などがあったことは否めません。

しかし、今回新型コロナウイルス問題の発生で国も東京都も予期せぬ膨大な財政負担を強いられています。たとえ一年後コロナ禍は収束している事は期待されますが、これ以上の巨額な財政負担に耐えられるのか、冷静に考えるべきではないかと思います。

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