一昨年12月に劇場公開された映画ですが、やっと見て きました。非常に元気なのんに出会えて安心しました。前作「星屑の町」では美声を披露してくれましたが、今回は歌声はありませんでした。しかしながら、かなりパワーアップした演技力は見応え十分でした。本作では実年齢よりも、もう少し年上女性(31歳)役を演じていました。女性監督ならではの描出力で、女性の感情の難しい起伏などが上手く表現された映画となっています。
本作は自分の頭の中に別人格の「A」(声だけの出演と思いきや、ラストでは実物が登場)がいるという非常に珍しい設定です。見ている人(男女問わず)ついつい他人の恋路の応援をしたくなる様な映画ではないでしょうか? まだ、見ていない方は映画館に是非足を運び、”のん”の恋を応援しましょう!
『私をくいとめて』のあらすじと概要
「勝手にふるえてろ」の大九明子が監督・脚本を手がけ、芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を実写映画化した作品。
のんと林遣都が初共演し、おひとりさま生活の自由を満喫する女性と年下男子の不器用な恋の行方を描き出す。何年も恋人がいない、ひとりきりの暮らしにもすっかり慣れた31歳のある企業に勤める黒田みつ子(のん)
そんな彼女が楽しく平穏に一人暮らしの生活ができているのには、ある理由がありまいた。彼女の脳内にはもう1人の自分である相談役「A」(男性?)が存在し、人間関係や身の振り方に迷った際にはいつも正しい回答を与えてくれるのでした。
ある日、みつ子は取引先の若手営業マン・2歳年下の多田に恋心を抱きます。かつてのように勇気を出せない不器用な自分に戸惑いながらも、一歩前へ踏み出すことを決意するみつ子でしたが、過去の経験が重しになって、なかなか勇気ある一歩が踏み出せずにいます。
みつ子の親友・皐月役で橋本愛が出演し、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」以来となるのんとの共演が久し振りに実現しました。
『私をくいとめて』のスタッフとキャストについて
大九(おおく)明子監督:明治大学政治経済学部卒業。学生時代からコント集団に所属し、大学卒業後は官庁の外郭団体に秘書として就職するが4カ月で退職。芸人養成学校スクールJCAの第1期生となり、お笑い芸人、女優として活動する。
その後、制作者を目指し、1997年に開校した映画美学校に第1期生として入学。学内シナリオコンテストで選ばれた脚本をもとにメガホンをとった初監督作「意外と死なない」(99)は一般公開されたという経歴を持つ。
わたしは大九監督の作品を見るのは今回が初めてでした。女性監督ならではの表現力で女性の内面を描写する力は流石だなと感じるが、きっと女性鑑賞者は、更にもっと深い所に女性の悩み、女性独特の問題の表現などを感じている様な気がしました。
今後、少し意識的に大九監督の作品に注意して見てみたいと思います。
のん (黒田みつ子):13年、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」のヒロインに抜てきされ、一躍人気の若手女優となる。翌14年は、映画「ホットロード」と「海月姫」で主演を務める。16年7月、所属事務所からの独立を機に、芸名を本名の能年玲奈から「のん」に改名。国内外で高い評価を獲得した片渕須直監督の「この世界の片隅に」(16)では、主人公すず役でアニメ映画の声優に初挑戦した。
本作映画の中では、冷静な自分と感情が高まった自分、更に第三者的な真っ当な意見を言う第三者「A」の3人が存在するのではないかと思う。感情の高ぶりは過去の男性との接触の際、嫌な思い出がぶり返したり、大嫌いな飛行機に搭乗する際抑えきれない感情が露わになってしまう。このあたりの演技力は、まるで別人ののんを見ている様でした。
昨年公開の映画『星屑の町」の感想投稿記事はこちら:
星屑の町 映画 朝ドラ”あまちゃん”ののん(能年玲奈)出演作レビュー!
林遣都(多田君):NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」やNHK大河ファンタジー「精霊の守り人」などに出演。又吉直樹の芥川賞受賞作をNetflixがドラマ化した「火花」(16)では波岡一喜とともに主演を務めるなど、大活躍中の俳優。
好青年の役どころを非常に丁寧にこなしているという印象を強く受けた。しかし男性的な押しが全く無いが、現代の平均的な若者像の代表なのだろうか!?
橋本愛(皐):中島哲也監督作「告白」(10)で注目を集める。13年、吉田大八監督作「桐島、部活やめるってよ」(12)などで、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。同年、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」に出演し、人気が高まる。
美術系の大学か専門学校の同級生という設定、学校卒業と同時に結婚していきなりイタリアに行ってしまったという設定。正月休みにローマへ一人旅に出て、再会を果たす。
臼田あさ美(のぞみさん):高校生の時に渋谷でスカウトされてモデルになり、2003年から女性ファッション誌「CanCam」、07年からは姉妹誌「AneCan」の専属モデルを務めた。その一方で、バラエティ番組「歌スタ!!」(05~10)やトーク番組「メレンゲの気持ち」(09~11)にレギュラー出演した。
のんの職場ではただ一人気を許せる先輩、少し能天気なところがあり、他人を和ませ、安心感を与えるのではないか!? 東京タワーの階段を恋人候補と登った際、相手への尽くしようは完全に限界点を超えている!(わたしはのんの次に好きです…)
『私をくいとめて』ネタバレ感想
河童橋、築地、築地本願寺など非常に身近な場所が舞台なので親近感を持ってみることが出来ました。みつ子や多田君が住んでいる商店街というのはどこなんでしょう?
お互いに恋心は持っているにも拘らず、全くもう一歩が踏み出せない仲というのも分かるような気がします。手作り料理を作ってもらい、鍋を持って料理を貰って帰るだけというのも「どうかなぁ」という気がしますが、あんな事ってあり得るんですかね?
「おひとり様」で気楽に食事というのも、現在ではごく自然な風景なのかも知れません。映画の前半はそういった「ひとり」の生活を切り取った場面が多くあります。しかし、多田君が出現した後、物語が動き出しますが、なかなかじれったい思いをさせられます。青春映画なのでオヤジがつべこべ言う筋合いはないのかもしれませんが…
ただ、イタリアローマ旅行が余りに唐突な感じは否めません。皐役の橋本愛を登場させるシーンを作りたかったのでしょうか!?
女性監督の感性とわたし個人の感性の開きを感じさせられた映画でした。のんを期待してみた映画だったのですが、ちょっとイメージと違い女性役だったのは、女優として一皮剥けた感じもします。
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