『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』のあらすじ概要
ナチスドイツの最重要人物アドルフ・アイヒマンの裁判が始まった年に、実際に行われた「アイヒマン実験」の全貌を描く実録ドラマ。
1961年、イェール大学の社会心理学者スタンレー・ミルグラムは、「なぜ、どのようにホロコーストが起きたのか」「人間はなぜ権威へ服従してしまうのか」を実証するため、電気ショックを用いた実験を行いました。「アイヒマン実験」と呼ばれたその実験は「一定の条件下では、誰であろうと残虐行為に手を染めるのでは」との疑念を実証し、社会全体に大きな影響を与えることとなります。
実験の歴史的な背景には、1960年、ホロコーストに関与した大物戦犯であるアドルフ・アイヒマンの身柄が潜伏先のアルゼンチンで拘束され、翌61年にはその裁判の模様が世界37ヵ国でTV放映されています。アウシュヴィッツ強制収容所での殺戮行為の実態が初めて明らかにされています。同時に、それを指示する立場にあった人物とは思えないアイヒマンの凡人ぶりにも世界中で驚きの声が上がったといいます…
なお、この実験の結果は世界に衝撃を与える一方、実験が非倫理的であることを理由にしたミルグラムへの批判も相次いだという。また、博士自身が語り部としてカメラに向かって話しかける独特のスタイルの作品となっています。 ※劇中の世界と観客側の現実世界を隔てる境界を演劇用語で“第四の壁”と言うらしく、演者がこれを越えて観客に直接語りかける手法を“第四の壁を破る”と言うとの事。
ミルグラム博士役を「マグニフィセント・セブン」「ブラック・スキャンダル」のピーター・サースガードが演じ、監督は「ハムレット」「アナーキー」のマイケル・アルメレイダ。
2015年製作/98分/アメリカ
原題:Experimenter (実験者) 邦題とかなり違います
ロッテントマト批評家支持率:90%
『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』のスタッフとキャストについて
マイケル・アルメレイダ監督・脚本・製作:カンザス州オーバーランドパーク出身。ハーバード大学で美術史を学んだが、映画の道へ進むために中退。
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ピーター・サースガード(スタンレー・ミルグラム):「デッドマン・ウォーキング」(96)でスクリーンデビューを果たしています。
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ヴィノナ・ライダー(アレクサンドラ・”サーシャ”・ミルグラム):東欧ユダヤ系の両親がヒッピーだったので、幼い頃からコミューンで育つ。フランシス・フォード・コッポラ監督の「ゴッドファーザー PART III」(90)でアル・パチーノの娘役に抜てきされましたが過労のため残念ながら降板しています。
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『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』のネタバレ感想・見どころ
邦題が重々し過ぎて本作品を見てみようとする人を躊躇させているのではないかと思います。ちょっとこれは非常に残念な気がしました。原題はExperimenter (=実験者)です。簡単過ぎて映画の内容は全く分かりませんが…
冒頭の実験の光景は確かに何やら得体の知れない恐怖感が漂っていました。しかし、その実験自体は成る程と関心させられる内容です。それは、人間が誰でも残虐な行為に手を染める可能性があるという事を明確に立証していました。現在の多くの人々は会社や社会で「代理人状態」(このような表現をしていました。上司、権力者から与えられる指示、命令にしたがっている)で、行動するので、自分自身でその行動の”善悪”を知覚出来ないか、あるいは知覚しようとする意志がありません。所謂、盲目状態で行動をしているケースが多いのではないかという意味の事が語られます。
その通りだと思いました。その意味では、邦題の『アイヒマンの後継者…』は我々全人類が対象という恐ろしい結果が見えてきます。
映画の中で、ミルグラム博士の実証実験の取り組み方などに他の権威ある人々から、実験の結果はともかく、倫理的に間違っているとの厳しい批判を受けていました。これは、人類に取って極めて不都合な”事実”が証明されてしまった事に対する苦し紛れの”反撃”であった様な気がします。
人の行動指針として非常に重要なテーマを取り扱っており、視聴後色々考えさせられる映画となっています。
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