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新刊書紹介|『太平洋戦争への道 1931-1941』半藤一利、加藤陽子、保坂正康⁅編著⁆ (NS NHK出版新書)

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おすすめ本の紹介
出典:アマゾン
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本書は非常に詳しく簡潔にまとめられており、分かり易いものとなっていました。本書で説明されている事実に気付かされると、そういう事だったのかと『なんて馬鹿なことしたのか』と思うのかも知れません。しかしながら、日本を含めアジア全体では1000万人を超える犠牲者の方々は本当に気の毒でしたという言葉だけでは済まされません。日本は戦後80年近く平和を維持できているのもこの戦争の教訓が生きているのかもしれません。しかし、二度と同じ過ちを犯さない為には、さらに二重、三重の歯止め的な「機能」を国家は備えるべきと痛感されられました。

『太平洋戦争への道 1931-1941』の概略

 

本書解説より。

満州事変から、真珠湾攻撃へ―― 日本を亡国に導いた6つの分岐点が詳細に解説されています。

2017年の終戦の日、昭和史研究のスペシャリスト3人が集結して話題を呼んだNHKラジオ番組「太平洋戦争への道」。その貴重な鼎談に、保阪正康氏の解説と図版・写真を加えた「日米開戦80年企画」として刊行されたものとなっています。1931年の満州事変から1941年の真珠湾攻撃へと至るその過程には、「亡国」に導いた見逃せない6つの分岐点があったと3人は口をそろえます。

各氏の視点と語り口が絶妙に交差しながら、昭和日本の闇へと迫る展開は、歴史好きの方にはもちろん、一般の方にも重層的な歴史理解を促すに違いありません。私たちは歴史から何を学ぶべきなのか。昭和日本が犯した「最大の失敗」から、令和日本が進むべき道を提言します。

著者及び著作について

半藤 一利
作家。1930年東京向島生まれ。近所に幼少期の王貞治が住んでおり顔見知りだったそうで、本書内で幼い頃の王選手の興味深いエピソードが紹介している。東京大学文学部卒業後、文藝春秋に入社し、日本中の戦争体験者の取材に奔走し、「週刊文春」「文藝春秋」などの編集長を歴任。
2021年1月逝去。著書に『日本のいちばん長い日』『ノモンハンの夏』など著書多数。

加藤 陽子
東京大学大学院人文社会系研究科教授。1960年埼玉県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。
著書に『それでも日本人は「戦争」を選んだ』(小林秀雄賞受賞)『昭和天皇と戦争の世紀(天皇の歴史8)』『戦争まで』『とめられなかった戦争』など。                       2020年には、日本学術会議の新会員候補に推薦されたが、他の5名の候補とともに、首相の菅義偉によって任命を拒否されています!

保阪 正康
ノンフィクション作家。1939年北海道生まれ。同志社大学文学部卒業。
「昭和史を語り継ぐ会」主宰。著書に『昭和陸軍の研究』『昭和の怪物 七つの謎』『あの戦争は何だったのか』『陰謀の日本近現代史』など多数。

『太平洋戦争への道 1931-1941』のトピックス

上述のの通り、日本を「亡国」に導いた見逃せない6つの分岐点についてすべて網羅する為には是非本書を読んで欲しいと思います。取り敢えず、本書内の気になったポイントのいくつかを以下列記させて頂きます。

日本が軍事的に表へ出て行くのを後押ししたのは、実は日本のマスコミ、それまで日本は軍縮ムードで、軍部を縮小しとり、日本のマスコミは厳しい目で見ていました。ところが、満州事変が起きてから、論調はがらりと変化した、、、よその国へ軍隊を出して、それがどんどん占領地を拡大して行くという動きに対しては、マスコミは物凄く応援を始める、、、

冷静な判断力で軍部の暴走などを止めるべきマスコミが逆に大応援団となり、国民一致団結して軍事的侵略を煽っていたというのも大きな問題であろうと思います。

太平洋戦争に入る時の中堅将校の中には相応に頭脳明晰、状況判断にも優れ、何よりも分析力にも優れているタイプが多かった。にもかかわらず彼らはなぜ、国際情勢の変化や他国の政策分析に正確な考えを出せなかったのか? 究極的に『日本の軍人の教育制度と内容』に基本的な過ちがあったのではないか!

ドイツの軍事学に、日本の武士道精神を加味するといチグハグな軍隊を作り上げた。その行き着く先が、特攻作戦だったいうことになる。このメカニズムを正確に解剖することで、太平洋戦争の多くの部分は解明できる、、、

経済力で10倍の差が歴然としている大国アメリカ相手に宣戦布告してしまう登場の異常ともいえる政府の状況判断力の”誤り”の根本的な理由を上記の様に解明しています。

「なぜ関東軍の独走、独断が許されてしまったのか?」

当時政府ばかりではなく、東京の陸軍参謀本部が不拡大という指令を出しています。しかしながら、関東軍はそれを聞かなかった。これは統帥権干犯にあたる。本来は違法行為、、、昭和天皇の命令が「不拡大」で、出来るだけ戦争を早くやめろ地言うのを、参謀総長は「は、承りました」といい、参謀から関東軍の参謀には「いい加減にしろ」という事を口で言うだけで、後半はずるずると一緒に乗っかってしまう。

 

さらに、関東軍のこれだけの暴走を許す背景には、やはり日本中央にも関東軍の将校に対する”期待”(朝鮮・台湾以外の新しい形の生存権の確保という意味で)があったのではないかと説明しています。

「2.26事件」がもたらした暴力(テロ)の恐怖によって、政府指導者が、軍に脅かされる状況になった。本来国民を守るはずの軍隊が、国民の安全を逆に脅かす存在として機能していく

なぜ中国内部に軍隊を送り込んだのか?

帝国主義として中国の内陸部に入って行くメリットは何も無い。広大な土地に兵士を大量に入れて、それで中国の資源を略奪すると言っても、相当の資本が掛かります、、、日本の軍隊あるいは政治が、何か基本的錯誤を犯していたのではないかという気がする、、、日中戦争にどう考えても戦争の大義名分が全く無い。

驚きでした!この点を指摘している歴史書は嘗て無かったと思います。広大な中国大陸に80万人もの軍事を送り込んでいたそうですが、戦争する大義名分が無いということは一体全体何のために進軍していったのでしょうか? 参謀本部作戦課に所属する指導班という組織は、当初は日中戦争に反対していたそうです。しかしながら、戦線の拡大は止まらず、結局反対していた参謀は配置転換を願い出てすべて異動していると、、、

どこにも歯止めが掛からず、ズルズルと泥沼化していく様子が叙述されており、国として冷静な判断を下せる人材がいなくなっていく様子が分かってきます。

 

『太平洋戦争への道 1931-1941』の世間の一般的な考え方はどんなものがあるのか?

読書メーターで公表されている読者の感想を一部ピックアップさせて頂きました。

太平洋戦争への道のりをコンパクトに綴った良著。戦争を煽っていたマスコミ、現実をよく知らぬまま根拠のない希望的観測で動いた軍や政治家の責任は重い。現代にも繋がる問題で、そこに正に歴史に学ぶ必要性があると痛感した

「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」など太平洋戦争への道を詳細に表した良書がある加藤陽子と半藤一利、保坂正康との対談が基本となった超オススメ本。「それでも〜」は詳細なので、細かい点にのめり込んでしまい事の軽重を見失いがちだった。この本は1931年の満州事変から1941年の日米開戦まで、特にターニングポイントである昭和8年を中心に重要なポイントを絞って詳しく描いている。加藤陽子は学術会議に任命否認された人で、偏りを感じる人たちもいるのかもしれないが、半藤・保坂両氏との鼎談なら偏りのない見解だと思う。

最後に

まず、本書を読んで初めて知った内容が多いのには自分としては勉強不足だったと反省しています。やはり、正しい歴史の理解というのは非常に重要な事だと思います。

本書最後には半藤一利さんの最後の言葉「日本人よ、しっかりと勉強しよう」という言葉を残されています。同じ過ちは繰り返さない、その為には我々には何が出来るか? よく考えて、出来れば実行して行きたいと思います。

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