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台湾映画「左利きの少女」- 左利きの彼女が見た、台北夜市の家族の物語

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「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」などショーン・ベイカー監督作のプロデュースや、共同監督作「テイクアウト」で知られるツォウ・シーチンの単独監督デビュー作。

脚本・製作・編集はツォウ・シーチンと、『ANORA アノーラ』でオスカーを獲ったショーン・ベイカーの共同。ベイカーと20年以上の相棒関係にある彼女が、故郷である台北・通化街(臨江街)夜市の麺屋台を舞台に撮った家族の物語です。全編iPhone 13で撮影されています。

あらすじ
借金を抱えたシングルマザーのシューフェンは、ハイティーンの長女イーアンと、5歳の次女イージンの3人で田舎から台北に戻り、夜市で麺屋台を始めて生活を立て直そうとします。商売は決して順調ではなく、賃貸料の支払いは滞り、家主からは執拗な督促。

長女は檳榔(ビンロウ)屋台の「檳榔ガール」として働き、母を支えようとします。そんな中、左利きの末娘イージンが、伝統的な考えを持つ祖父から左手を「悪魔の手」と言われ、食事では左手で箸を持つことを禁じられます。そこから何世代にもわたる家族の秘密がほどけていく…。

考察

  1. 麺屋台の隣の若者は、母親シューフェンに好意を寄せる青年 = ジョニー

通販雑貨のようなものを売るロン毛の、気のいい優しい男。シューフェンの店の賃料が払えないと知れば黙って助け、子供たちにも優しい。古き良き台湾の青年らしい正義感がある人物です。若い頃の寅さんを見ているようでもありました。

末娘イージンをまるで父親のように面倒を見る姿が印象的です。シューフェンが次第に心を惹かれていくのも、自然な成り行きに思えます。

  1. シングルマザーシューフェンの別れた元夫

画面に映るのは入院している姿のみですが、彼の残した借金と入院・葬式代が、屋台の賃料すら払えなくなるほど家族を追い詰めます。

「どうしようもないけど見捨てられない弱い人間」。それでもシューフェンが面倒を見てしまうところに、彼女の人の良さと、人間としての強さが表れています。台湾の女性あるある、という感じも受けました。

  1. 長女イーアンの生き方は母親とは対照的

19〜20歳、高校中退。成績優秀でみんなの憧れの的だった過去を持ちながら、家の借金のために早くから社会に出ざるを得なかった。

そして選んだのが、こともあろうに檳榔西施(ビンロウ・ガール)。台湾の夜市や街道沿いにある、ガラス張りの店内で派手な衣装でビンロウやタバコを売る仕事です。男性客の視線を集める仕事として知られています。

これは反抗と自立の証でしょう。稼ぐために体を張ることもいとわない旺盛な独立心。しかし、オーナーであるロン毛の男と関係を持ち、妊娠してしまうという迂闊さも併せ持っています。

  1. 無邪気な5歳の次女の大きな存在感

監督のツォウ・シーチンは彼女を「生まれ持った才能がある特別な子」と絶賛。演じるニーナ・イエ(葉子綺)は2016年生まれ、撮影時は7〜8歳なのに、台北の夜市をiPhoneの前でまったく物怖じせず駆け回る姿は、演技というより存在そのものです。

祖父に「左手は悪魔の手」と叱られ、右手を使うように厳しくしつけられる。そして言われるままに「悪いことが起きるのは私の左手のせいだ」と本気で信じ込んでしまう純粋さ。5歳の少女そのものです。

そのくせ「悪魔のしわざ」と言い訳して左手で万引きをしてしまう、子供らしい小ズルさ。大好きなママのために“悪魔の手”に稼いでもらおうとする健気さ。

監督が描く台北の大人の現実世界の雑多な騒がしさと、5歳の少女の目線でぼんやり眺めている世界が交錯していくのが美しい。

万引きした商品を長女に付き添われて各店舗に返しに行く場面では、どの店でも幼い子供の出来心としてすぐに許し、叱ることなく鷹揚に受け入れる人情味に驚きました。

  1. 母親シューフェンはこれから幸福になれるのか

シューフェンはこれまでの人生、ずっと「誰かのために」生きてきました。ダメ夫の借金を背負い、別れた元夫が病気になれば周囲の反対を押し切って入院費と葬式代まで出す。

(ネタバレ) 長女イーアンが若くして産んだ子(イージン)を、「イーアンの将来のため」と言って自分の子として育ててきた。

たとえ貧しくても最愛の家族に囲まれて生きている。そして隣に「自分のことを見てくれる人(ジョニー)」がいることに気づけた今、彼女は初めて自分の幸せを感じているのだと思うのです。

最後に「2026年8月14日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開」

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