出向していた中国合弁企業の夏休みを利用し、九寨溝旅行の帰りの重慶から長沙へ戻るフライトが、突然キャンセルになるという連絡を旅行の出発前に受けました。
インターネットで申し込んでいたチケットは、旅行出発以前に重慶から長沙に戻るフライトは欠航との連絡があり、他会社便への振替手続きは重慶空港内の航空会社カウンターで行って欲しいと奥凱航空より連絡を受けていたのです。
わたしは九寨溝旅行の初日に、重慶空港到着後、帰りのフライトを確認しようとして、予定していた空港内の奥凱航空のチケット購入窓口を探しました。しかし、いくら探してもその窓口は見つからず、最終的には重慶空港内にはどうやら奥凱航空のチケットカウンターそのものが無い事が判りました。
重慶で航空券の振替を行えとの指示を受けていましたが、その窓口がそもそも重慶の空港内にはなく、重慶市内にある航空会社オフィスまで行かなければならないという事になってしまいました。
わざわざ重慶市内の奥凱空港のオフィスを探して市内に行く時間の余裕もなく、且つ、問題が複雑で手に負えないと感じた為、夏季休暇中のわたしの会社の通訳の女性に電話で事情を話し、如何に重慶から長沙へ戻るフライトを確保するべきか相談しました。
通訳と旅行会社であるC-trip(携程)と電話で話し合ってもらい、購入済の奥凱航空のフライトは一旦キャンセル(払い戻し費用発生無しで購入代金の返却に応じる)し、新しい他航空会社のフライト便を、新たに買い直す事で問題はないという単純な方法で解決してくれました。
奥凱航空の便をキャンセルして、南方航空の別の便を新たに予約する事が出来ました。最終的にはもとの航空券をキャンセルして、新しい航空券を買い直すという単純な事でしたが、一般的に問題は万一キャンセルした場合はキャンセル料がかなり高額な為(場合によっては航空券の50%など高額のキャンセル料が発生する)、また、航空会社の責任によるキャンセル(今回は奥凱空港側の欠航という理由)にもかかわらず、乗客が勝手にフライトをキャンセルすると、不合理にもキャンセル料が個人負担になる恐れがあり、安易にキャンセルする事は躊躇われていました。
しかし、今でも不思議に思うことですが、奥凱航空は重慶空港から自社便のフライトを飛ばしているにもかかわらず、チケットを販売する奥凱航空の窓口が空港内に設置されていないというのは常識的に考えられないことだと思います。
想定外の問題が常に発生する可能性がある中国社会ですから、やはりそれなりのこころの準備は欠かせません。
重慶空港は決して規模が小さい地方空港ではなく、北京、上海並みの大空港です。また、長沙よりも利用乗客数は圧倒的に多い筈です。なぜ、空港内に発券・搭乗オフィスが設置されていないのかこれは全く理解に苦しみました。
ところが、この無事に購入出来た重慶から長沙行きの南方航空のチケットですが、実は、今後の教訓となる大変な試練が待ち受けていました。
わたしは九寨溝訪問した後、重慶に戻り、更に重慶近郊の武隆(カルスト地形)を訪問しました。
その帰り道、夜遅く重慶市内へ戻るツアーバスの車中、丁度ホテル付近に近づいたところで私の携帯電話に「南方航空」から一本のメールが着信していました。
「貴方の搭乗予定の明日の南方航空のフライトがキャンセルになったので至急、南方航空宛て連絡を願いたい」旨の連絡でした。今回の旅ではフライトの確認にトラブルが続いており、 「またか」と思いました。悪い事は重なるものです。
取り敢えず、ホテルにチェックイン後、荷物を置くと直ぐに、メールに指定された電話番号に電話しました。電話に応答した「南方航空」を名乗る人物は「貴方の明日のフライトは突然キャンセルになった。しかし、お金を直ぐにデポジットすれば、別便の席を確保出来る。明日中に長沙に戻るフライトの確保の問題は無い。但し、別便を手配する為には、すぐに銀行ATMに行って支払い手続きをしなければならない」と言ってきました。
当初は既に夜遅く22:00を過ぎており、これほど遅い時間に明日のフライトのキャンセル連絡というのも奇妙な話という思いも一瞬頭を掠めました。
また、携帯サイトの南方航空のフライト状況を念の為確認したところ、元々予約していた明日のフライトの運行状況は「正常」と問題無しと表示されていました。
しかしながら、万一、明日中に長沙に戻れないとなると明後日に予約してある長沙から日本への帰国便に間に合わない可能性があるので、やはり明日の長沙への戻り便は確認をしておいた方が良いと思い直しました。
「南方航空」の指示に従い、深夜遅い時間帯にも関わらず、ホテルの近くにある銀行ATMを探して、明日のフライトのチケット手配して貰う為、「デポジット」の払い込み手続をしようとしました。
ここまではまさか自分が振り込み詐欺に引っ掛かるとは夢想だにしていません。近くの銀行ATMを見つけ、そこから「南方航空」担当者に再度電話を掛け、言われる相手先銀行口座番号に、指示された金額5000元を振り込むべく、銀行口座番号を入力しようとしました。(実際のチケット料金は1000元前後でしたが)
振込指定の口座番号が細かい長い19桁の数字の羅列であった為、また、夜間暗いATMの画面の前で、何度も打ち間違えて、入力がうまくできません。「南方航空」担当者は、通話口でわたしを励ましていました。 「間違ってもいい、落ち着いて最初からもう一度やり直して入力すればよい」と何度も懇切丁寧に口座番号を教えてくれました。
正しい口座番号、入金指示金額を入力し終えた最終段階で、「南方航空」の担当者は焦りを感じて来たのだと思います。遂に絶叫し始めました「確認ボタンを押せ!」「確認ボタンを押せ!」(中国語:按確認!)叫ぶようになっていました。
この突拍子もない絶叫を聞いて、南方航空職員がどんなに急いでいたとしても、絶叫して大声で『振り込め!』というのは可笑しいと思った瞬間、私は正気に戻り、冷静になることが出来ました。
ふと我に返り、5,000元の振込操作の手を止めましたし。電話口で相手に向かって「止めた!」と言って、どう考えても「おかしい」と言って、電話を切ると共に、振込手続きは最終確認ボタンを押す寸前で踏みとどまる事ができました。
まさか自分のフライト詳細や携帯電話番号が第三者に流されて、間一髪で中国版振り込め詐欺に引っかかるところだったとは考えてもいませんでした。
たまたま多少北京語が理解出来たが為に、まんまとATM窓口で詐欺師の言いなりになる寸前だったことを猛省しなければなりません。
それにしても、人の弱味(明日どうしても長沙に戻らなければならない)に付け入る手段は極めて巧妙です。最後に「振り込め!」と相手が絶叫せず、淡々とした口調で会話を続けていれば、間違いなくわたしは正気に戻らず、ATMの振り込み「確認」の最終ボタンを押していたに違いありません。
中国の新聞では、様々詐欺の手口が毎週紙面を一枚使い特集記事が組まれ興味深く読んでいました。通販で購入する偽ブランド品の横行、格安観光旅行での高額な買い物の押し付け等々、まったく他人ごとだとばかり思っていた振込詐欺にまさか中国で、しかも重慶で巻き込まれそうになるとは…本当にびっくり仰天しました。大変貴重な教訓となりました。
九寨溝及び武隆他訪問投稿記事⇩
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