蘭嶼(らんゆー)は台湾の南東沖に浮かぶ周囲40㌔ほどの小島です。台湾原住民のひとつで、フィリピン・バタン諸島から移り住んだとされるタオ族4,000人程が現在も暮らしています。この島も80年代台北での研修時代に研修生仲間4名と訪問しました。
台北からはまず台東まで飛行機で飛び、翌日、更に台東から蘭嶼は小型セスナで飛びました。勿論船便もあります。また、台東には古くから湧く知本温泉という日本風の露天風呂もある温泉地のホテルに前泊しました。
当時は蘭嶼の島民の男性は褌一丁を締めてふだんの生活しているという噂も聞いていましたが、行った時期が冬季だったせいか、褌姿の島民の姿は見る事は出来ませんでした。
到着後、飛行場の近くで早速オートバイを借り、宿に荷物を置き、島内巡りに出発しました。わたしはオートバイそのものを運転した経験は無かったのですが、レバーを引いて右脚で前に何回か踏んで行くとギアが入るというような簡単説明を聞いて、運転を開始しました。4人ともかなりオートバイの運転には不慣れでしたが、直ぐに慣れたようでした。
まだ観光地として、開発が余り進んでいないため、観光スポットというものは無かったのではないか?と思います。ただ、時々土産売り場などがぽつりぽつりと目につく程度でした。
まず、最初の一軒の商店の前にオートバイを止め、店内を物色すると原住民が魚を取る為、海に漕ぎだした船の30㌢位のミニチュアが売られていました。聞いてみるとまあまあ手頃な値段だったので各自1,2艘ほど買い込みました。
島内を周回する単純な道なので迷うことはありません。快調に飛ばして行くと、また、土産売り場が現れたので、中を覗くと同じような手彫りの船が売られていました。この店の船は手彫りの精度も高く、色もしっかり塗られており、先ほどの店よりも立派そうに見えました。しかも値段も安い。既に1,2艘手元にあるのに、また、全員で買い増ししました。
さらに、暫く進んで行くと、またまた、3軒目の土産物売り場が現れました。みんなの関心事はこの店の船はいくらなのかという事でした。期待の通り2軒目の店より更に安かったので驚きました。わたしは、3艘目を買って止めましたが、先輩Tさんらは抱えきれない大量の船を7,8艘も買っていました。
この日、われわれ見事に島の“販売戦略”に引っかかって、結局4人で蘭嶼島内の土産の船をほぼ買い占めた事に大変満足し、宿に戻りました。
ところが、宿に戻ると先輩Tさんのオートバイだけがなかなか戻らず、一時間程待った後、心配になり、Nが夜道を迎えに行き、二人相乗りで宿に戻ってくるというハプニングがありました。オートバイがエンストして真っ暗な夜道で途方に暮れて立っていたそうです。しかし、翌朝放置したオートバイまで全員で戻り、エンジンを掛けると一発で掛かったのです。オートバイの故障ではなく、単にTさんの操作方法が悪かったことが分かりました。
オートバイト、手彫りの船以外に蘭嶼に関する情報はありません。蘭嶼情報を楽しみにされていた方には大変申し訳ありません。島めぐりの最中には、褌一丁で暮すタオ族の方々との接触は残念ながらありませんでした。
なお、わたしの購入した手彫りの舟は永年家の装飾品になったいました。悲しい事に、いつの間にか気が付くと、かみさんにすべて整理され、捨てられてしまいました。タオ族の手彫りの思い出深い舟だったのですが、これも時代の流れと諦めています。
もう一つの離島、同じく台東の南東沖に浮かぶ緑島は蘭嶼よりも台湾本島に近く、小さな火山島でサンゴ礁に囲まれています。1987年まで政治犯収容所があったことでも知られている島でした。
緑島には、わたしより一年遅れでやって来た研修生仲間であるNと二人で訪問しました。この島も、観光地化される以前の島で、山の多い島内をぐるりと歩いて一周することにしました。歩き始めるとパパイヤなどのトロピカルフルーツ実り、更に歩くと一面の原野が続いていました。人影もほとんど無い道が続き、気温も上昇し、途中持参した飲料もあっという間に底を突き、後先を考えず、飲み干してしまったことを悔やみました。
長い時間を、水分補給無しで歩く事になりました。今でいう熱中症が心配になりました。自動販売機でもあればなぁと幻想を抱きながら彷徨い歩いていると、まったく信じられないことに、80年代台湾本島ですら、非常に珍しかった自動販売機が目の前に忽然と現れました。
半信半疑でコインを投入すると、冷えた缶ジュースがちゃんと出てきました。当たり前の事ですが、非常にびっくり仰天しました。ほとんど人の気配のない、田舎道に誰が自動販売機を設置したのだろうか、皆目見当が付きませんでした。
『意思があれば、道は開ける』という言葉がありますが、信じられない事も起るものだと二人で本当にびっくりしました。
緑島の最大のおすすめスポットは海底から湧く温泉でした。温泉といっても、そこには人口の施設は一切存在せず、ごつごつした浅い岩場の海底から自然に湧き出す温泉が海水と程よく混ざり、よい湯加減の天然温泉となっていました。台湾ならではの大自然のなかで、存分に温泉浴を愉しむことが出来ました。
日本の山梨県に富士山を眺望できる「ほったらかし温泉」という名前の施設がありますが、文字通り、こちらの温泉は一切、手の掛けられていない、正真正銘の“ほったらかし”温泉だったのです。
更に、周囲を浅瀬のサンゴ礁に囲まれ、透き通るきれいな海に多くの熱帯魚が泳いでいました。
深水70-70㌢ほどの海にプール用ゴーグルをつけ、優雅に泳ぐ魚たちを追いかけました。しかしながら、縞模様の珍しいロープかと思って観察していたところ、先端に小さな目が二ついた海蛇を目撃したときは驚愕しました。その時は潜って顔を30㌢位海蛇に近づけ、あわや手で握ろうとしていた瞬間、目がある事に気付き、慌てて手を引っ込めたのです。後で聞くと猛毒を持つ海蛇だった様です。小さい小型の蛇で、幸い、口も小さく人間は噛むことが出来ないとは言われましたが、『君子危うきに近寄らず』です。
海で泳いだり、潜ったり、身体が冷えるとまた海中温泉で温まるということを繰り返しで過ごしました。熱帯魚の泳ぐ海と海底温泉を独占し、時の過ぎるのをまったく忘れた1日でした。
台湾のおすすめ温泉についてはこちらをご参照ください
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