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新刊書おすすめ『覇王の轍』(相場英雄著・小学館)感想‣鉄路の下に巨悪は眠る!新幹線恐ろしや。

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おすすめ本の紹介
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友人から北海道関係者に是非と言われ勧められた本を購入して読みました。警察キャリアの女性が、北海道警に転勤の為、赴任するシーンからストーリーが始まります。とても懐かしい函館本線の車窓の風景が目に浮かぶようでしたが、その後のスピード感溢れる展開の凄まじさに一挙に没入させられる筆力には驚きました。著者相場英雄の本を読むのは今回初めてとなりましたが、他にもベストセラーを何冊も書いている様です。しかも社会派のばりばりの硬派な内容(ノンフィクションに近い内容と聞いています)なので、是非他の著作も引き続き読んでみたいと思いました。

『覇王の轍』の概要

警察キャリアの樫山順子は、北海道警捜査二課長に突如、着任することになった。歓楽街ススキノで起きた国交省技官の転落事故と道内の病院を舞台とした贈収賄事件を並行して捜査するなか、「独立王国」とも称される道警の慣習に戸惑う。両事件の背景に、この国の鉄道行政の闇が広がっていることも知り……大ベストセラー『震える牛』で食品偽装を、NHKでドラマ化の『ガラパゴス』で非正規労働の闇を暴いた筆者が、ついに鉄道行政のタブーに踏み込んだ!

(小学館HPより抜粋)

『覇王の轍』の感想(ネタバレ無し)

「整備新幹線」という言葉を聞きますが、そもそも日本全国に新幹線網を津々浦々まで張り巡らせるという計画は今から50年も前に作られたものと聞いて本当に驚きました。また、本書でも再三取り上げられていましたが、東北新幹線の状況は岩手県盛岡駅以北、青森県内ではほとんで乗客が無くなってしまうそうです。ましてや、函館・札幌間の北海道新幹線が開通したところで利用客は殆んど無く、開業後の大赤字は誰が見ても明らかと思われます。東京から札幌まで行くのに鉄路を利用する見込み客はよっぽどの鉄道オタクだけではないでしょうか。飛行機ならば新千歳空港まで1時間40分です。しかもエアドゥなど格安航空券はネット情報では最安値5,810円/片道(変動あり)というびっくり仰天値段で販売されています。勿論、スキーシーズン、札幌に宿泊しニセコのゲレンデを目指すスキーヤーにとっては新幹線活用はたいへん便利だと思いますが…

 

北海道経済の地盤沈下が激しく、新幹線整備事業で国内建設産業を盛り上げ、その経済波及効果を狙うという事は理解出来ます。しかしながら、50年前の計画を令和の新しい時代に踏襲し、大赤字覚悟の新幹線を作るという計画には俄かに信じ難いものがありました。

 

本書では、整備計画の突然の計画の前倒しで5年も早く完成させる為、人命すら軽んじられる急ピッチの建設が進んでいる状況が描かれています。そして死亡事故という大きな事故を起こしています。そして、それに疑義(正論!)をぶつけようとする邪魔になった国交省官僚を何の躊躇も無く抹殺していまうという、どこかの独●国家のような振る舞いは余りにも目に余りました。

 

北海道警の伏魔殿、国交省の伏魔殿…などなど情報が明かされるに従って、わたしの胸の奥底がむらむらするような何とも言えない暗澹たる不愉快な気持ちに満たされました。

 

小説の最後の最後に待ちに待った『天誅』でも下って一泡も二泡も食わせるのかと期待していましたが、逆に主人公は全く予期もしなかった『大どんでん返し』(多分読者の100%が騙されたでしょう!)を喰らい、正直お先真っ暗な気分になりました。日本は救いようが無いのか〜

 

この小説程ほど、先を読み進めたくなる本は最近お目にかかった事はありません。とてもわくわくドキドキする時間を過ごす事が出来ました。是非、一読をお勧めします。

 

『覇王の轍』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

一般公開されている「読書メーター」の読者感想欄よりい勝手に2,3つの感想をピックアップさせて頂きます。総じて好意的な感想が多いです。

 

読み終わってもやもやは残るものの、読み応え充分で満足。国のトップに立つ雲の上の人たちは、個人の生死より国の秩序を優先するものなのか。法を遵守することが歪められようとも守らなければならない国の秩序とは…

歓楽街ススキノで起きた国交省技官の転落事故と道内の病院を舞台とした贈収賄事件を並行して捜査するなか、「独立王国」とも称される道警の慣習に戸惑う。両事件の背景に、この国の鉄道行政の闇が広がっていることも知り…。/①50年前に決められたことが、既定路線として見直しもされず今も生きている。②全てを差配する官房副長官。そんなに力があるのか。③ヒロインのキャリア、綺麗に事件を捌いたかに見えたが。どんでん返しの返し。④身内をスパイする公安

相変わらず骨太な相場作品。丁寧な展開で汚職と事故死、転落死の真相に迫っていく。が、最後の最後で天の声で真相がつぶされる。かと思いきや政権が変わることで希望の光が。というストーリーは先日読んだ堂場作品でもTVドラマ「エピオス」でも。それだけ実際にも時の政権と企業、警察の癒着はあるということなのか。

最後に

最近出版された相場英雄氏の単行本、文庫本の著書を紹介させて頂きます。読了後ぜひまた感想記事を書きたいと思います。

■単行本新刊

『覇王の轍』(2023/2/1発売)
『マンモスの抜け殻』(2021/12/8発売)
『レッドネック』(2021/5/14発売)
『Exit イグジット』(2021/1/21発売)

■文庫本新刊

『アンダークラス』(2023/1/6発売)
『血の雫』(2021/10/7発売)
『キッド』(2021/6/10発売)

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