『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』の概要
「私たちはなぜ生きて、なぜ死ぬのか」忙しい毎日のなかで忘れてしまうこの根源的な命題に、答えはあるのか。「How(いかに)」ではなく「Why(なぜ)」を問うことで見えてきたのは、最先端で奮闘する科学者たちの葛藤だった。いまの科学にわかること/わからないこととは何か。「圧倒的に文系」な著者による、緊迫感に満ちた理系入門。(本書裏表紙より引用)
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
森/達也
1956年、広島県生まれ。映画監督・作家。98年、オウム真理教のドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。11年に『A3』(集英社インターナショナル)が講談社ノンフィクション賞を受賞。著作多数
本書は著者による、第一線の理系の科学者ら10名との対話集になっています。テーマは上記とおり、人類の永遠のテーマ「私たちはなぜ生きて、なぜ死ぬのか」です。多くの生き物の中で、自分はやがては死ぬという観念を持っているのは人間だけと本書内で書かれていました。この事実を改めて知ったのも初めてのことでした。
その他に論ぜられるテーマは多種多様です。第一線の生物学者に、比較的素人目線に近い(とはいううものの相当勉強されており詳しい)基本的な考え・思いを直接疑問としてぶつけられ、学者から本音を聞き出してくれています。
知的好奇心に刺激を与えてくれる良書ですので、是非一読をお勧めします。
以下にトピックスを何点が引用させて頂きます。本書の雰囲気を一部だけでもお伝えできればと思います。
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読書感想|『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョンJ.レイティ著)NHK出版
感想|「次世代半導体素材GaNの挑戦」天野浩著/窒化ガリウムが切り開くニューワールド!
感想|「免疫力を強くする」宮坂昌之著/新コロナウイルスに打ち勝つ唯一の方法!
感想|『血圧を最速で下げる 老化を防ぐ「血管内皮」の鍛えかた』 奥田昌子著
『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』の断片的なトピックス・感想など
ドーキンスの利己的遺伝子論=「ぼくたちは乗り物に過ぎない。本質は遺伝子なのだ」しかし、もし人間が自動車や飛行機と同じ用に遺伝子の乗り物であったなら、人間の知性や感情は不必要と筆者は反論します。むしろ、虫は(おそらく)ヒトの様な感情を持たないけれど、生きる上で支障はありません。むしろ遺伝子の乗り物としてはホモ・サピエンスより優秀かもしれないと筆者は言います。
人間の脳はわずか2%ですが、1日に消費するカロリー量の20%を消費する。つまり神経系はとてもコストが掛かる。だから食生活に余裕が合う動物じゃないと、神経系は進化しない。つまり、余程条件が良くないと、脳は進化できなかった。人間が脳を進化できたのは、脳を進化させるだけの資源の余裕が生まれた、これは共同繁殖社会だからだろうと考えている。
ヒトの脳の発展の理由について説明された部分が大変分かり易く納得出来る部分です。大きな群れを作るヒトの特色ですが、それが脳の発展へかなりの影響を及ぼしたようです。
バクテリア(原核生物)だからと馬鹿にしてはいけない。バクテリアがいなかったら私たちは存在しない。ある意味では最高の擬人化ですが、バクテリアは人格を持っている。外部環境をモニターして食べるものを探し、更に滴を見分ける能力が無ければ死んでしまいます。そういう意味での人格です。=細胞は体全体を意思の脳の様に使って生きている!
このレベルになると実際の生物学者の説明を聞いてもそうですか、と肯くのみです。
これほど技術は進歩した。でも、アトム(人工知能)は生まれない。なぜならば模倣しようにも、感情や知能はまだ全く解明できていないからだ。太陽系外宇宙や深海の底まで人類は探求し始めている。これらはあくなき好奇心のなせる技。でもその飽くなき好奇心が何故どのように生じるか、人は全く解明できていない。
宇宙の膨張の速さを比べれば、昔と今を比べれば、昔より遅くなっているどころか、むしろ早くなっていることがわかりました。1998年のことです。これにはみんながびっくり仰天しています。でも宇宙が膨張していると仮定すれば、宇宙の構造などのこれまでの矛盾が、とてもクリアに解決できることもわかりました。ところが加速している理由が分かっていない。
宇宙は物凄い速さで膨張しているそうですが、それがさらに大変な速さで加速しているとのこと。但し、銀河系は宇宙の中では同じ位置に止まっているそうです。宇宙全体は膨張しているが、銀河は停止…やがては全宇宙の分子も原子も「膨張」して、素粒子まで分裂してしまうのか?
暗黒物質と暗黒エネルギーの両方を合わせると、宇宙の九割以上を占めている。その前提のもとに宇宙の終わり方を新たにシュミレートすることが出来る…
なんど説明を聞いても全く理解できないのが、この暗黒物質、暗黒エネルギーです。これが全宇宙の9割を占める「宇宙」とは一体何なのでしょうか?
時空の一点が急激に膨張して宇宙が出来た。つまりビッグバンだ。でも始まりは終わり以上に、リアルな感覚が追いつかない。ビッグバン以前は「わからない」としか言いようがない。(??)
『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』の世間の一般的な意見はどんなものがあるのか?
10月10日文庫本として出版されたばかりなので、書評の数は多くありません。読書メーターに投稿された書評のいくつかを引用させて頂きます。
面白かった!専門的内容も、生粋の文系だという筆者がいい感じに誘導して分かりやすい。最先端をいく生物学者、物理学者、脳科学者へのインタビューという形式が効果的。チューブワーム、太陽との距離や物理公式等人間に都合良く出来すぎている宇宙、「自分が見ている紫が他人には茶色かもしれない」自分の脳が認識している世界の曖昧さ、量子論と仏教が親和性がある等、興味深い話が満載。哲学や宗教も絡めた文理ミックスで、理数系に疎い私でも楽しめた。子供に「私はどこから来たの?死んだらどうなるの?」と聞かれたら何と答えましょうか?
「文系」の著者だからこそ、タイトルのような疑問点を追求して文章化してくれるのだろう。「中二病」という言葉も出てくる。しかしタイトルのような哲学的、根源的な問いには、本書のようなインタビューがふさわしいし、理解しやすい。生物への「なぜ」は、量子論・宇宙論まで巻き込んで、意志・意識の謎、生物の動的システム、時には非科学的な話題さえも交えて、あの問いへと進んでいく。「ドキュメント」とあるように、単に対談のテープ起こしなどではない。研究者との丁々発止がスリリングで要注目
最後に
サイエンスの最先端でも分からない事はまだまだ多いという事が分かりました。でも、人間が何故好奇心を持つのかということも解明できていないそうです。この疑問自体にも、正直少し驚きましたが、、、
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