1996年のある日、日本人駐在員の香港の家庭に招かれた時の印象です。Mくんは会社入社同期でもあり、新人時代入寮した社員寮も同じでした。寮では帰宅時間もまちまちで、朝食時間で一緒になるものの、慌ただしい通勤時間帯ではゆっくり世間話も出来ませんでした。それでも時折、お互い忙しい時間の合間に飲みに行く機会はありました。彼の豪快な食べっぷり、飲みっぷりには心底驚かされました。
久しぶりに香港で再開し、私は出張者、彼は香港駐在員としてご家族を帯同し、香港で超多忙の駐在員生活を送っていました。同期という間柄でもあり、また、一時ブラジル向けの大型商談を成立させていたこともあるなど多少繋がりもあったことから、休日に食事でもどうかと誘われ、彼の香港島のマンションに尋ねて行きました。
会社からは家賃補助が支給されましたが、それだけでは不足するため、より良い環境を求めわざわざ自腹を切り、高層で非常に見晴らしの良い高級マンションに住む駐在員が多かったと聞きました。詳しくは聞いていませんが、子供の教育機関も周辺に整っている様に見えました。奥様の手料理ハンバーグ、焼き加減、肉汁、デミグラスソースどれもが絶品で舌鼓。香港は広州など中国内部の都市と比較して、断然日本食材も豊富で、日本とほとんど変わらない食生活が可能と聞いてはいましたが、それでもまったく不自由が無いわけではありません。もしかすると、中華料理に飽きた長期出張者あるいは外食の多い単身赴任者がたまに呼ばれ、ここの日本食に癒されることも多いのではないかと思いました。
Mくんのご家族は奥様と育ちざかりの超わんぱくな男の子3人、小5、小3、小1。ダイニングの隣でぎゃあぎゃあと騒ぎ始め、モノの取り合いで取っ組み合いの喧嘩が始まりました。殴り合いへの発展にMくんも堪らず止めに入りましたが、子供の顔色がみんな蒼白になっていて、手加減なしの本気の大げんか、これには子供同士とはいえ心底驚きました。
Mくん曰く長男は赤ん坊の頃から泣いたことが無いほど気丈な子だと。泣かない赤ん坊が本当にいるのか訝りましたが、面構えを直接見て納得、小さいのにメンタルめちゃくちゃ強そうでした。Mくんは学生時代は柔道をやっていて、子供は剣道をやっているそうです。「加藤は剣道だろ、今度子供たちに教えてやってくれ!」と頼まれました。見るからに将来強くなりそうな有望な三兄弟に、本当に稽古をつける日が来るのか、たいへん楽しみでした。



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