最近では新型コロナウイルスの発生源と言われ、はなはな評判の良くない中国武漢市ですが、わたしは1988年に初めて訪問しました。当時は中国の旅行ガイドブックも大変限られていた為、『地球の歩き方・中国編』を片手に北京を拠点にして中国国内をいろいろ旅行しました。
尚、武漢の位置は、地図で見ると一目瞭然ですが、ほぼ中国の平原部の中央に位置しており、北に約1000㌔行くと北京、東に同じく約1000㌔に上海、西約1000㌔に重慶、南約1000㌔に広州があります。重慶と上海とは長江の中間地点となっています。東西南北の交通が十字に交わる要衝であり、この都市が、どれほど重要な位置を占めているか良く分かると思います。
武漢名物の魚料理(淡水魚)で、毛沢東主席が大絶賛したという「武昌魚」の紹介がありました。ひとり旅でしたが、勇気を出して大テーブルのあるレストランに入って注文してみました。
一人旅でレストランに飛び込み大皿料理を注文することは、中国での生活が長くなると学習効果で、だんだん出来なくなってくるものです。その理由は、一般の中華料理はメニューの一品がほとんど4,5人用とかなりの量がある為、中国人は、一般的にはひとりでレストランに入ってアラカルト料理を注文することは余りありません。
わたしは、当時まだ「中国」の新参者だったので、何も恐れることなく何事にも果敢に挑戦していたものです。店の人に「毛沢東首席が好んで食べた武昌魚が食べたい。」と値段も聞かず、大きさも気にせず注文してしまいました。わたしの覚えたての北京語でもその程度の料理の注文は可能だったのです。
魚料理は日本でのレストランでの注文と違い、店では生きた魚を水槽から掬い上げ一匹単位で調理します。通常500グラム(=一斤)いくら(何元)という単位で値段の提示(時価)があります。しかし、1980年代の中国の物価は日本の物価に比べればとても安かったので、値段をまったく気にすることなく何でも注文が出来ました。
調理には大変時間を要しましたが、ようやく出て来たお皿は直径70㌢(両腕で抱えてられない)はあろうかと思われる程の大きさで、皿に大魚が一匹乗っていました。「まさかこんなに大きいとは!一人ではとても食べ切れない!」と一瞬思いました。
店内のすべての客の視線が全部大皿に向けられている様な気がしました。客の一人は私のテーブルに近寄って来て、「その魚をおまえ一人で食べるのか?」「いくらした?」といちいち余計な事を聞いてきます。随分おせっかいな客もいるものだと思いました。「全部一人で食べる」と返事をしました。
非常に淡白な味でとても美味しかったのと(淡泊なので味付け次第ではどのような味にもなるのですが、湖北料理は一般的には激辛)、空腹だった事もあり、どうにかこうにか一匹を平らげました。中国の魚料理は決して、日本のさんまの塩焼き、ほっけ焼をを想像してはいけません。その店で得た教訓から、以後中国国内の一人旅では絶対に魚料理を注文しない事にしました。魚料理は大人数での会食時のメイン料理として食べるのが良いようです。
蛇足ながら、魚料理の注文の失敗談はもう一つあります。以前、わたしは香港に出張し、取引先のお偉方とシャングリラホテルの日本料理店「なだ万」で会食する機会がありました。この日の注文はコース料理ではなく、アラカルト料理で各自好きな料理を注文することになりました。当時、なだ万という高級料理店は日本でも食事をした経験がありませんでした。
メニューを見せられますが、料理の内容や注文の仕方が良くわかりませんでした。
魚料理を選ぶ事になり、メニューの中にあった「鯛のかぶと煮」が目に入り注文してしまったのです。他の方と同じく魚は刺身、切り身の塩焼き等を無難に注文しておけばよかったのですが、もう後の祭り。何を勘違いしたのかいまでは良く覚えていませんが、「かぶと煮」を注文してしまいました。
他の人の料理は順調に運ばれて来ていましたが、ところがわたしの注文した「かぶと煮」は調理に相当な時間が掛かったのか、待てど暮せどなかなか出てきません。周囲の人が心配して「お前は、一体何をたのんだんだ」と聞いてきます。
漸く運ばれてきました。それが、あっと驚くほどの80㌢はあろうという大皿に盛られた「鯛のかぶと煮」でした。正に、大相撲の優勝力士が片手で抱えている様な鯛です。ほとんどの方が既に料理を食べ終えていました。わたしの魚料理の皿だけ場違いに大きく、隣の人に少し食べて頂けませんかとも言えず、この場の雰囲気は本当に冷や汗ものでした。
日本料理を注文する際も、料理を選ぶ事は、場所を弁えて十分注意した方が良いと思います。判らなかったら、場慣れした人に良く聞くか、他の人と同じものを注文するのが鉄則ではないでしょうか!
何事も色々な失敗から学ぶことは多いです。旅の恥はかき捨てはいけませんね!
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