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おすすめの歴史小説『八本目の槍』(今村翔吾著 集英社文庫) 感想‣石田三成についてまったく新しい見方が出来る歴史小説!

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『八本目の槍』の概要・あらすじ

安土桃山時代の見方が変わる! 誰も書かなかった三成が、ここにいる!
盟友「賤ケ岳七本槍」の眼を通して、浮かび上がる三成の真の姿とは。
過酷な運命を背負った七本槍たちの葛藤、三成との相克そして信頼が、巧みな構成のなかに描かれ、三成の言葉には、千年先を見通した新しき世への希望が滲む。はたして、戦国随一の智謀の男は、何を考え何を思い描いていたのか。凄まじき〝理〟と熱き〝情〟で、戦国の世に唯一無二の輝きを放った武将の姿を、史実の深い読みと大胆な想像力で描く傑作。吉川英治文学新人賞受賞作。(アマゾンHPより抜粋)

『八本目の槍』の感想

石田三成とはどのような人物であったのか、賤ヶ岳七本槍と言われる加藤清正、福島正則ら盟友7名の人物を描く事で「石田三成」の凄さ、卓越した点を鋭く描いています。

そもそも「七本槍」という言葉は頭の片隅にありましたが、豊臣秀吉が柴田勝家と戦った賤ヶ岳の戦での功労者7名を「七本槍」と呼ぶことを今回正確に知る事が出来ました。そして彼ら7名と石田三成を加えた8名は秀吉配下の小姓衆と呼ばれ、秀吉の身辺に仕える若者で、一般的には諸々の雑用を請け負う存在であったと言います。本書では「近衛兵」的に秀吉に仕え日夜武術、学問の習得に明け暮れていた若者の様子が描かれています。但し、実際の合戦では自ら配下にも20-30名の兵を従え、参戦したとあります。

「小姓衆」の意味は従来、殿様の周りに従う「お付き」程度の理解しかなかったのですが、全くの誤解である事を知りました。『幸村を討て』以来の著者のファンですが、本作でも鋭く人間味が炙り出される各武将についても、益々興味が牽かれる事になりました。

また、本作の”主人公”である石田三成に関わる記述にも大変興味を魅かれました。個人的には我がふるさと埼玉県の忍(おし)城が舞台となった映画『のぼうの城』(観賞された方も多いと思われます。”のぼう”とはデクノボウの意味)で、攻め手である圧倒的兵力を持つ秀吉側の総大将が石田三成でした。『戦下手』と言われ、僅かな兵力で籠城する忍城側の頑強な抵抗、水攻めによる自らの失敗もあり、敗退させられていました。そんな敗軍の将との印象もありました。後に関ケ原合戦で家康に敗れています。

しかしながら、そんな理解が180度も違うという内容で石田三成が表現されています。

戦闘よりもロジスティクス分野で才能を発揮し、後方支援で秀吉の大軍団を支え続けた抜群の力量、更には戦争の無い(武士を必要としない)世の中を”予言”するほどの優れた先見性などを垣間見せています…一部家康との合戦に関しても自軍の敗北の可能性についても十分計算し尽くされていた様です…

まったく知らなかった事ばかりの”時代小説”の世界、わずかに窓が開かれた気持ちになっています。当面今村翔吾ワールドから抜け出せそうにありません…

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『八本目の槍』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

読書メーターで一般公開されている本書感想記事を参考までに抜粋させて頂きます。

全般的にやはり絶賛されている読者が多い様です。

加藤清正、福島正則が印象深い「賤ヶ岳七本槍」武門一辺倒に伝えられた彼ら一人一人を作者の筆は実に人間味のある男前に描き出している。各々の物語はその幾人かが奇しくも関ヶ原で対立することになる石田三成と云う人物の輪郭を浮かび上がらせる。そして物語は豊臣の末期に至る過程を八本の槍が交差する形で描き出されていく、作者は三成をもう一本の槍として、時代を超えた非凡な天才として描き出す。だがしかしそれ程の天才と云えど時代の流れは思い通りにはならない。

賤ヶ岳七本槍それぞれの章で石田三成との関わりが描かれて展開していく物語。これほど好感が持てる治部は初めてかも?最終的に7人&治部の思いが繋がっていくのが感動的!じんかん と甲乙つけがたい傑作!!

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