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おすすめの歴史小説『小説上杉鷹山 全一冊』(童門冬二著 集英社文庫)感想‣人を思いやる心とすぐれた実践能力!

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『小説 上杉鷹山 全一冊』の概要とあらすじ

九州の小藩からわずか十七歳で名門・上杉家の養子に入り、出羽・米沢の藩主となった治憲(後の鷹山)は、破滅の危機にあった藩政を建て直すべく、直ちに改革に乗り出す。――高邁な理想に燃え、すぐれた実践能力と人を思いやる心で、家臣や領民の信頼を集めていった経世家・上杉鷹山の感動の生涯を描いた長篇。全一冊・決定版。(集英社HPより抜粋)

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『小説 上杉鷹山 全一冊』の感想

小説の舞台にもなり頻繁に名前の出ていた「小野川温泉」、そこに鷹山の片腕となり藩政改革の中軸を担った藩士佐藤文四郎と恋仲になるみすずが働いている旅館(飯屋)が描かれています。どうやらこの地からは、藩士が半ば帰農し耕地の新規開拓に心血を注いだ地域が近いと描写れていました。(詳しい地理的な関係までは分かりませんが)たまたま、この「小野川温泉」<開湯は約1200年前、絶世の美女と伝えられる平安時代の女流歌人“小野小町”が旅する途中、温泉で病を癒したという伝説から始まる。古くから湯治場として親しまれ、現在13件の旅館が立ち並びます>を今年まだ雪深い2月に家族と訪問していました(本書を読む前です)。そしてその時の私の温泉の感想としては「(宿泊旅館)山川館の温泉は肌に優しい中性で、纏わりつく様な滑らかさ、それでいて体の芯から温まりました。身体の疲れが心底癒される、そんな感じを受けました」と記しています。そんなこともあり、本書を読み進めていく内にかなりの親近感を抱く事になりました・・・

「上杉鷹山」名前は以前から知っていましたが、具体的に何をした人物かと聞かれ正直具体的には何も答える事は出来ませんでした。本書を読み人物を良く知る事が出来ました。活躍した時代は有名な老中田沼意次と重なります。田沼意次は、賄賂・縁故が幅を利かせる政治の代名詞として記憶されています。しかし、上杉鷹山の方は同じ時代に生きたとは思われない程180度も異なる清廉潔白の「為政者」(華美な生活を止め、木綿の服、一汁一菜の食事を自分自身実践、参勤交代の大名行列も規模を縮小して、乞食の集団の様な有り様だったと描かれています)振りを発揮して、あわや滅亡しかかった米沢15万石を見事に蘇生させています。

「小説」なので多少の誇張、今はやりの「盛り」はあるにしても、(文庫本)にして600ページにも及ぶ詳細な描写で「鷹山」の人物を深く掘り下げ、且つ、米沢藩の藩政改革が如何に困難を極めたものだったかという事が描かれていきます。

わずか17歳という若い藩主、しかも、九州日向の小藩から迎えられた婿養子の新藩主という立場では、名門「上杉家」の古参重臣・藩士から全く相手にされないということは痛いほど理解出来ます。しかし、彼は信じられない手腕を発揮して一歩一歩味方を増やし改革を見事に進めていきます。

最初の目の付け所は全ての「改革」のヒントになりそうです。それは、たった一人では15万石の米沢藩の改革は不可能なので手足となり働く人材を探します。非常にユニークなところですが、藩内で「アウトサイダー」と見做され、有能でありながら直言癖があり上司に煙たがれる人材や才能を活かされることなく閑職で埋もれていた人材を率先して次々仲間に引き入れ、改革実行の指導者としての地位に引き上げる事に成功しています。

また、改革の妨害は日常茶飯事で、最悪のケースは反対派重臣一派に囲まれ、自分の失政を認めるか、実家である九州の小藩に戻るかという絶対絶命の選択を迫られる危機に陥ります。なんとか奇跡的に救われていますが…

江戸時代300余あった藩の中で、上杉鷹山の様な「思想」(人民が主体の社会を築く…)を持ち、この考え方を実際に実行した「藩主」はほとんどいなかったのではないかと思われます。

「上杉鷹山」を良く知った上で、もう一度「小野川温泉」の湯に浸かれば、身も心もより一層清冽な気持ちになれるかもしれません。

『小説 上杉鷹山 全一冊』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

読書メーターで一般公開されている読書感想文の一部を抜粋させて頂きます。大方好意的な感想が多きです…

鷹山は、何でもできるスーパーヒーローではなく、仲間を信じ、協働体制を作り、物事を成し遂げていった。任せるだけではなく、自分も苦労と辛さを背負い、共に歩いていた。 誰もが鷹山の味方ではない、というのに信じる。人に騙されても騙さない。 率先垂範、師弟同行の精神と実行力。 残したものは、金や物だけでなく、人、文化を残した。 先憂後楽も印象に残る言葉。

米沢藩に伝わる「伝国の辞」はケネディに感銘を与えた。 「伝国の辞」は鷹山が代を譲る際、新藩主に心得として示した三条。 一、国家(米沢藩)は、先祖から子孫に伝えられるもので、決して私すべきものではないこと 一、人民は国家に属するもので、決して私してはならないこと 一、国家人民のために立ちたる君(藩主)であって、君のために人民があるのではないこと 内村鑑三の英訳をJ.F.ケネディが読んだらしく、鷹山の名を出して尊敬する日本人と名を挙げた。

二世・三世議員が多い国会の昨今の姿を見て上杉鷹山はどう思うのでしょうか?

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