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おすすめ映画|『世界の涯ての鼓動』(2017/ヴィム・ヴェンダース監督)フランス・ノルマンディーの海辺で出会い

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世界の涯ての鼓動のあらすじと概要

『X-MEN』シリーズ(11~19年)のジェームズ・マカヴォイと『リリーのすべて』(15年)のオスカー女優アリシア・ヴィキャンデル名匠ヴィム・ヴェンダース監督代表作『パリ、テキサス』(84年)、『ベルリン、天使の詩』(87年)が顔を合わせた本作品『世界の涯ての鼓動』(17年)は、宗教・歴史・テロ・科学・生命という多くのテーマを内包する壮大なラブストーリーです。

フランス、ノルマンディーの海を臨む景勝の地に立つ瀟洒なホテルで運命的に出会った生物数学教授ダニー(アリシア・ヴィキャンデル)と、英国諜報機関MI6のエージェント、ジェームズ(ジェームズ・マカヴォイ)。偶然に出会い、過ごした5日間で激しい恋に落ちる2人だったが、ダニーにはグリーンランドの深海に深海底で潜る調査任務があり、一方ジェームズには爆弾テロを阻止するべく南ソマリアへ水井戸掘削技術者に扮して潜入する任務がそれぞれ待ち受けていた。互いを運命の相手と認識しながらも離ればなれになった2人には、過酷な運命が待ち受けていました……。

生命の根源である「海」をキーワードにしてストーリーが進行します。雄大な海洋・大自然を情感たっぷりの映像美と音楽、前半ではいままで仕事一途であった主演2人が、偶然に運命の人との出会いを壮大なノルマンディーの海浜風景の中で描写しされています。なんとも羨ましいカップルに対して焼き餅を焼きたくなるくらいです。

近年の映画の典型的なストーリーとは全く逆行する大変古風なつくりで、男女が愛に出合い、惑い、そして別れがあります。通常と違うところは彼らは短い休息を過ごした後、極めて過酷な任務が待ち受けていました。

海浜の町が舞台の最近見た映画には、

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世界の涯ての鼓動のネタバレ感想

ストーリーとテーマについて

お互いの居場所は海底と戦場(ソマリア南部)で全く電波の届かない場所にいる為、想いだけをよすがに、切れそうになる運命の糸を手繰り寄せようとします。イスラム武装組織ISに拘束されたジェームズは人としての扱いを受けられず、いつスパイであることが露呈して殺されてしまうかもしれない不安な日々を過ごしています。ひたすら人類未踏の海底に挑んでいく恋人ダニーを案じ、祈りをささげるしかありません。一方、ダニーは自ら永年待ち望んだ深海探査のパイオニアとして活躍出来るチャンスですが、ジェームズとまったく連絡が取れないので、不安は高まる一方です。業務遂行に身も心もまったく入らず、貴重なサンプルを破損してしまうなど不手際を重ねます。

本作品は、前人未到の深海探査と、イスラム過激派との「戦い」が同時進行的に描かれています。ヴェンダース監督は「この2つはとても現代的な問題」と認識しており、彼が感じる共通項は、「間違った形でお金やエネルギーを注いでいる」点だと雑誌のインタビューで語っています。「人間は空や宇宙の惑星に取りつかれているが、地球上の水、大海原は、生命の源。深海には、環境問題を解決するものが多く眠っているかもしれない。なのに、よくわかっていない。その一方で宇宙開発に莫大お金を費やしているが、それはすべて、馬鹿げた投資に思える」と痛烈に批判しています。

さらに、同雑誌のインタビュー記事では「この構図は、西側諸国のイスラム過激派に対する態度と相通じる、とヴェンダース監督は言い、『イスラム過激派への政治の取り組みは、対話ではなく戦争だった。私たちは人間として、対話で解決する多大な可能性を秘めていると思うが、西側諸国は対話や理解への努力が十分でない。9.11の米同時多発テロ以来、”テロとの戦い”を続け、それによってさらにテロリストを生んできた』『私たちはお金を使うほど地球をダメにし、多くの人たちが置き去りにされ、成長の恩恵を受けない。そうした人たちが反乱を起こし、過激化する。(イスラム過激派の)若者の多くは基本的に、他に選択肢がないままジハードに従ったりして、悪い方向へと導かれている。西側諸国がイラク戦争に費やしたお金がもしインフラ構築に使われていたら、イスラム過激派もついえていたのではないか。仕事も作り出せただろうし、病院や学校などを作ることもできただろう』とますます批判は留まるところを知りません。

しかし、正に核心を突いた発言だけに、耳の痛い内容だと感じるのは私だけでは無いと思います。

その上、更に監督はキング牧師の言葉「闇を闇で追い払うことはできない」を引いて『闇は、光でもって戦わなければならない。もしジハードを闇と見なし、さらなる闇でもって戦っても、成し得ない。それが私の考えだ』と語っています。本作品で『すべての登場人物を先入観なく見つめ、ダークサイドにも人間性があるのだと考えるようにした』とヴェンダース監督は言います。「映画には、”敵”にも人間性があるのだと示す大きな責任があると思う』と強調しています。

監督が、これほどまでに正義感の強い人物であるとは思ってもいなかったので、正直びっくり仰天しました。監督の本作品の意図はラブロマンスと見せかけて、実は裏で語ろうとしているところはもっと深い意味が込められています。このことを理解しながら本編映画を鑑賞するべきだと思います。

演出や脚本について

物語は全体としては、ラブストーリーが軸になっています。「愛こそが世界で語られる唯一の言語、かつ唯一の解決法で、いろんな手助けになるものだと私は思っている。ラブストーリーがなければ、深海の問題やイスラム過激派の状況について取り組もうとはしなかっただろう。愛の物語が核になければ、この映画を作れなかっただろう」とヴェンダース監督は語っています。

但し、離れ離れの2人が海辺のホテルでの5日間の記憶を反芻するという構成で、長めのフラッシュバックが何度も何度も多用されることで、ストーリーの流れが滞り、また、中盤をじっくりやり過ぎて、終盤にばたばたと物事が進展してしまうなど等々批判的な見方をする観衆も多く、正直世間の評価は期待程余り高いとは言えないようです。

キャラクターとキャストについて

ジェームズ・マカヴォイ:1979年生まれ、英スコットランド・グラスゴー出身。TVシリーズ「恥はかき捨て」(04~05)をきっかけに英国内で注目度が高まり、ファンタジー映画「ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女」(05)で世界的に脚光を浴びる。「X-MEN」シリーズでは第4弾「フューチャー&パスト」(11)からプロフェッサーX役を演じる。何といってもブルーの瞳が魅力的です。

アリシア・ヴィキャンデル:1988年生まれ、スウェーデン・イエーテボリ出身。09年に「Till det som ar vackert(英題:Pure)」で映画デビューし、18世紀後半のデンマーク王室を舞台にした歴史ドラマ「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(12)で王妃カロリーネを好演した。ジョー・ライト監督の「アンナ・カレーニナ」(12)で英語劇に初出演する。トム・フーパー監督の「リリーのすべて」(15)では、アカデミー助演女優賞を初ノミネートで受賞。マット・デイモン主演の「ジェイソン・ボーン」シリーズ新作(16)にも出演し、ハリウッドでの活躍が益々期待されてるので目が離せない女優です。

まとめ

ヴェンダース監督が語るように政治的な意図は抜きにして、ノルマンジーの海浜を舞台にしたラブロマンスとして観ても勿論楽しい映画と評価できますが、やはり、ISとの闘争、深海冒険などテーマが三つ巴で錯綜してしまい映画としてのまとまりは今イチの様な印象を受けます。

わたしの評価は84点。アリシア・ヴィキャンデルが美しいのでもっと点を上げたいところですが、、、

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