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おすすめ映画『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999/ペドロ・アルモドバル監督)感想‣登場人物たちの強さや多面性が魅力の映画

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『オール・アバウト・マイ・マザー』のあらすじ概要

スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが、最愛の息子を事故で失った母親を中心に、様々な人生を生きる女性たちの姿を力強く描くことで、息子の死を乗り越える魂の軌跡を描いたヒューマンドラマ。

マドリードで暮らす臓器移植コーディネーター・マヌエラは、1人息子エステバンを女手ひとつで育ててきました。エステバンの17歳の誕生日、マヌエラはこれまで隠してきた元夫の秘密を息子に打ち明けることを決意します。しかしそんな矢先、観劇の帰り道、エステバンは大女優ウマにサインをもらおうと道路に飛び出し、車にはねられて帰らぬ人に。17年前から行方不明となっている元夫に息子の死を知らせるため、かつて青春時代を過ごしたバルセロナを訪れたマヌエラは、ひょんなことから息子の死の原因となった女優ウマの付き人になります。

バルセロナでマヌエラは、ウマのレズビアンの恋人で麻薬中毒の若手女優・ニナ、性転換した明るいゲイの娼婦・アグラード、エイズを抱えて妊娠した純朴なシスター・ロサ(ペネロペ・クルス)、その母親でボケの進んだ夫に手を焼く厳格な贋作画家、そして、今では「ロラ」という名の女性となりロサにエイズをうつした、息子と同名の元夫といった様々な女性たちと出会い、やや複雑な人間関係に混乱しそうですが。やがて人生への希望を取り戻していくことになります。

キャストにはセシリア・ロス、ペネロペ・クルスらアルモドバル作品の常連俳優がそろいます。第72回アカデミー賞で外国語映画賞を見事に受賞しています。

1999年製作/101分/スペイン
原題:Todo sobre mi madre

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『オール・アバウト・マイ・マザー』のスタッフとキャストについて

ペドロ・アルモドバル監督・脚本:1949年スペイン出身。本作品「オール・アバウト・マイ・マザー」(98)でアカデミー賞の外国語映画賞、「トーク・トゥ・ハー」(02)では脚本賞を受賞。世界的巨匠と呼ばれる映画監督のひとりとなる。

なお、同監督とペネロペ・クルスが三度目のタッグを組む新作「Parallel Mothers(英題)」が、今年3月末にスペインでクランクインしたと報道されていますが、公開が楽しみです。

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マリサ・パレデスウマ・ロッホ):1960年代からスペインの映画やテレビで活躍しており、若い頃はティーン・アイドルだったそうだ。

セシリア・ロス(マヌエラ):1956年生まれ、アルゼンチン/ブエノスアイレス出身。

ペネロペ・クルス(シスター・ロサ):1974年生まれ、スペイン・マドリッド出身。本作「オール・アバウト・マイ・マザー」(99)は国外での評価も高く、この作品を機にアメリカやイギリス映画への出演が増えるようになる。

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『オール・アバウト・マイ・マザー』のネタバレ感想

(ネタバレ有り)

スペインらしい映画と言えます。力強く生き抜く女性らを自然でありながら微妙な糸で紡ぎ、描出する技量は非常に見事です。元男だった女性(性倒錯者オカマ)も2名出てきますが、それぞれ非常に深い悩みを抱えています。

息子を事故で亡くした母親、道端で”客”に殴られながらも必死に生きる”女”、痴呆症の夫の世話をしなければならない婦人、エイズに感染し胎児に問題が無いか悩んでいる妊婦など絵空事では決してないリアルな現実に近い問題に悩む女性が主人公となっています。しかしながら、これだけ悲惨な状況を積み重ねながらも、映画のトーンは決して重苦しく陰鬱ものになっていません。どこかに”活路”が見出せるような展開があるからだろうと思います。人それぞれの不幸に関しては、それ程深く立ち入らず、「お気の毒」の一言で、さらりと受け流すところがいいのかもしれません…

更に、明るい部屋の壁紙、鮮やかなコート、華やいだ金髪なども悲惨な状況を緩和させる効果を実感出来ます。

マヌエラはバルセロナで偶然にも大女優ウマの付け人に取り入れられます。挙句の果てにちゃっかり病欠の女優の代役で舞台にまで立っています。尼僧ロサは母親には妊娠したことを打ち明けられず、マヌエラの部屋に転がり込んで来ます。オカマのアグラートはマヌエラに替わってウマの付け人になった様です。また、これだけの複雑な人間関係を混乱もなく、一遍の作品にまとめ上げる監督の力量に甚だ感心させられる作品です。

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