アカデミー賞受賞発表を前にして、怒涛の様に毎週公開される映画を映画館で鑑賞するのがとても楽しみな日々が続いていました。漸く公開ラッシュシーズンも一段落しましたが、今後もまだまだ映画祭常連&新星監督の新作が目白押しのよう気を抜く事ができません。映画ファンにとっては嬉しい限りです。最近見た新作10作品につき好み順でランキング付けしました。是非、参考にしてみてください。
- 第1位 『ナイトメア・アリー』(2021/ギレルモ・デル・トロ監督)
- 第2位『ベルファスト』(2021/ケネス・ブラナー監督・脚本)
- 第3位『シラノ』(2021/ジョー・ライト監督)
- 第4位『潜水艦クルスクの生存者たち』(2018/トマス・ビンターベア監督)
- 第5位『林檎とポラロイド』(2020/クリストス・ニク監督・脚本)
- 第6位『TITANE チタン』(2021/ジュリア・デュクルノー監督)
- 第7位『オートクチュール』(2022/シルビー・オハヨン監督)
- 第8位『THE BATMAN ザ・バットマン』(2022/マット・リーブス監督
- 第9位『父さんのバイオリン』(2022/アンダチ・ハズネダロール監督)
- 第10位『ナイル殺人事件』(2022/ケネス・ブラナー監督)
第1位 『ナイトメア・アリー』(2021/ギレルモ・デル・トロ監督)
「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ監督が、ブラッドリー・クーパーはじめ豪華キャストを迎えて送り出すサスペンス・スリラー(ネオノワール映画)。
過去にも映画化されたことのある、1946年に出版された作家ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの名作ノワール小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作に、野心にあふれ、ショービジネス界で大成功した男が、思いがけないところから人生を狂わせていく様を描いています。
ショービジネスでの成功を夢みる野心にあふれた青年スタンは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座とめぐり合います。そこで読心術の技を学んだスタンは、人をひきつける天性の才能とカリスマ性を武器に、トップの興行師へと成長していきます。
しかし、その先には思いがけない闇が待ち受けていた。スタン役を「アリー スター誕生」「アメリカン・スナイパー」などで4度のアカデミー賞ノミネートを誇るブラッドリー・クーパーが務め、2度のアカデミー賞受賞歴をもつケイト・ブランシェットほか、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、ルーニー・マーラらが主役級の豪華共演者が揃います。
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第2位『ベルファスト』(2021/ケネス・ブラナー監督・脚本)
俳優・監督・舞台演出家として世界的に活躍するケネス・ブラナーが、自身の幼少期の体験を投影して描いた自伝的作品。第94回アカデミー賞では、作品賞を含む7部門にノミネート、これはアカデミー賞史上初の快挙“通算7部門ノミネート”も達成しています。(授賞式は現地時間日曜日3月27日に開催) さらに第79回ゴールデングローブ賞では最優秀脚本賞に輝いている作品です。
本日本作を見た感触では作品賞獲得間違いないと感じた素晴らしい映画でした。
ブラナーの出身地である北アイルランドのベルファストを舞台に、1960年代後半激動の時代に翻弄されるベルファスト市民の様子や、困難の中で大人になっていく少年の成長などを、力強いモノクロの映像で描いています。
ベルファストで生まれ育った9歳の少年バディは、家族と友達に囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごしていました。笑顔と愛に包まれ、歌と踊り映画のある日常はバディにとって完璧な世界だでした。しかし、1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民への攻撃を始め、穏やかだったバディの世界は突如として死の危険を感じる様な悪夢の世界へと一変してしまいました。
住民すべてが顔なじみで、ひとつの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断され、街中にバリケードを築いて安全を守るような、暴力と隣り合わせの日々の中で、バディと家族たちも永年住み慣れた故郷を離れるか否かの決断を迫らていました。
なお、映画に出てこない、イギリスに到着してからの家族の生活は、ブラナー監督によれば「とても辛かった」という回顧談を映画誌のインタビューで語っていました。
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第3位『シラノ』(2021/ジョー・ライト監督)
1897年の初演以降、世界中で映画化やミュージカル化されている不朽の名作「シラノ・ド・ベルジュラック」を、「つぐない」「プライドと偏見」のジョー・ライト監督が再構築して描くロマンティックミュージカル。
シラノ役を「ゲーム・オブ・スローンズ」のピーター・ディンクレイジ、ロクサーヌ役を「マグニフィセント・セブン」のヘイリー・ベネット、クリスチャン役を「ルース・エドガー」のケルビン・ハリソン・Jr.が演じた。
舞台は17世紀のフランス。剣の腕前だけでなく、すぐれた詩を書く才能を持つフランス軍きっての騎士シラノは、自身の外見に自信が持てず、思いを寄せるロクサーヌにその気持ちを素直に告げることができずにいました。そんな彼の思いを知らないロクサーヌは、ある日シラノと同じ隊のクリスチャンに一目惚れしてしまいます。シラノは口下手なクリスチャンに頼まれ彼女へのラブレターを書き、2人の恋の仲立ちをすることになってしまいます。愛する女性の願いを叶えるため、シラノはクリスチャンに代わって、自身の思いを込めたラブレターをロクサーヌに書き続けることになります……。
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第4位『潜水艦クルスクの生存者たち』(2018/トマス・ビンターベア監督)
2000年にロシアで起きた原子力潜水艦事故を「アナザーラウンド」でアカデミー国際長編映画賞を受賞したトマス・ビンターベア監督のメガホン、マティアス・スーナールツ、レア・セドゥー、コリン・ファースのキャストで映画化。
乗艦員118名を乗せ、軍事演習のため出航し、3日目に原子力潜水艦クルスク艦内で突然魚雷が温度上昇により突然暴発する事故を起こします。事故の爆発規模は凄まじく、3000度近い熱波が一瞬にして8割の船員を焼き尽くし、ノルウェーなど近隣諸国はその爆発の衝撃を、海底火山の噴火か地震と誤認するほどだったと記録されています。
司令官ミハイル(マティアス・スーナールツ)は、爆発が起きた区画の封鎖を指示し、部下と安全な艦尾へ退避を始めますが、艦体は北極海の海底まで沈没します。実際は深水100㍍の地点。生存者わずか23名という大惨事となってしまいます。生き残ったかれらは、海の底で希望を捨てずあらゆる手を尽くしつつ救助を待つのでしたが、
海中の異変を察知した英国の海軍准将デイビッド(コリン・ファース)は、ロシア政府に対して救援の意志を伝えるが、沈没事故の原因は他国船との衝突にあると主張するロシア政府は乗組員の救出よりも軍事機密の隠蔽を重視した為、他国の救助艇をクルスクには近寄らせようとしなかった。このような乗組員の生命よりも国家の威信を優先するロシア政府の態度に、ターニャ(レア・セドゥ)たち乗組員の家族たちは怒りをあらわに抗議しますが、ついに最悪の事態を免れる事はできませんでした…
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第5位『林檎とポラロイド』(2020/クリストス・ニク監督・脚本)
ギリシャの新鋭クリストス・ニクが長編初メガホンをとり、記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界を舞台に描いたドラマ。
ある日突然バスの中で記憶を失った男は、治療のための回復プログラム「新しい自分」に参加します。彼は毎日送られてくるカセットテープに吹き込まれた内容をもとに、自転車に乗る、仮装パーティで友だちをつくる、ホラー映画を観るなど様々なミッションを忠実にこなし、ポラロイド写真で記録を残すという生活を送って行きます。くだもの屋で、主人公が過去から好物だったらしい林檎を買っていると、住所を尋ねられた拍子にふっと以前住んでいた住所を応えるソーンも出来てきます。
そんな中、男は同じく回復プログラムに参加する女と出会い、親しくなっていきます。男が新しい日常に慣れてきた頃、彼はそれまで忘れていた、以前住んでいた番地をふと口にする。新しい思い出を作るためのミッションによって、男の過去が徐々にひも解かれていく様子が丁寧に描かれていきます。
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第6位『TITANE チタン』(2021/ジュリア・デュクルノー監督)
「RAW 少女のめざめ」で鮮烈なデビューを飾ったフランスのジュリア・デュクルノー監督の長編第2作。頭にチタンを埋め込まれた主人公がたどる数奇な運命を描き、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた。(なお、デュクルノー監督は同賞受賞の史上二人目の女性監督となります)
幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまいます。自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは、年老いた消防士ヴィンセントと出会い奇妙な共同生活を開始する事になります。ヴィンセントは10年前に息子が行方不明となり、現在はひとり孤独に暮らしていました。アレクシアはヴィンセントの”息子”に成り済まして共同生活は続けられますが、アレクシアの体には重大な秘密がありました。ヴィンセント役に「ティエリー・トグルドーの憂鬱」のバンサン・ランドン。
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第7位『オートクチュール』(2022/シルビー・オハヨン監督)
フランスのラグジュアリーブランド「Diorディオール」のアトリエを舞台に、世代も境遇も異なる2人の女性の人生が交差する様子を描いたヒューマンドラマ。
ディオールのオートクチュール部門でアトリエ責任者を務める孤高のお針子エステルは、次のコレクションを最後に引退することを決めていました。準備に追われていたある朝、エステルは地下鉄で若い女性にハンドバッグをひったくられます。ジャドがエステルのハンドバックを盗んだことで、出会うはずのなかったふたりの人生が交差していきます。その犯人ジャド、夢を見ることさえ知らなかった移民二世の少女の滑らかに動く指を見た瞬間、ドレスを縫い上げる才能を直感したエステルは、彼女を警察へ突き出す代わりに見習いとしてアトリエに迎え入れます。
反発しあいながらも、時には母娘のように、そして親友のように、美を生み出す繊細な技術をジャドに授けていくエステルでしたが、コレクション発表を直前にし、とうとう過労で倒れてしまいます…
「たかが世界の終わり」のナタリー・バイがエステル、「パピチャ 未来へのランウェイ」のリナ・クードリがジャドを演じた。ディオール専属クチュリエール(ディオールの衣装デザイナー)ジュスティーヌ・ヴィヴィアンが衣装監修のもと、ディオール・ヘリテージに保管されていた幻のドレスや貴重なスケッチ画などが登場します。
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第8位『THE BATMAN ザ・バットマン』(2022/マット・リーブス監督
クリストファー・ノーランが手がけた「ダークナイト」三部作などで知られる人気キャラクターのバットマンを主役に描くサスペンスアクション。
青年ブルース・ウェインがバットマンになろうとしてから2年目の姿を描き、社会に蔓延する嘘を暴いていく知能犯リドラーによってブルースの人間としての本性がむき出しにされていく様が描かれます。両親を殺された過去を持つ青年ブルース(本作品では大富豪のイメージは刷新されています)は復讐を誓い、夜になると黒いマスクで素顔を隠し、犯罪者を見つけては力でねじ伏せ、悪と敵対する「バットマン」になろうとしています。しかし、バットマンの活躍も空しく、未だ犯罪は減る気配が無い背徳都市ゴッサムシティが舞台。陰気な雨が続き、闇の暗黒街を描き1940年〜50年代の犯罪映画フィルム・ノワールを意識して重厚に描かれていきます。
ある日、権力者が標的になった連続殺人事件が発生します。史上最狂のサイコな知能犯リドラー(ポール・ダノ)、犯罪者を容赦なく殺し、動画映像を通じ犯人として名乗りを上げます。リドラーは犯行の際、必ず「なぞなぞ」を残し、警察や優秀な探偵でもあるブルース宛レターを残すなど自己顕示欲が強く、挑発を繰り返します。やがて政府の陰謀、汚職検事やブルースの両親の過去、父親が犯した罪などが次々に暴かれていきます……。
「TENET テネット」のロバート・パティンソンが新たにブルース・ウェイン/バットマンを演じ、「猿の惑星:新世紀(ライジング)」「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」のマット・リーブス監督が新たに監督を務める。
映画の途中バットマンの乗る「バットモービル」は物凄い迫力で激走します。この車が炎を突き破ってジャンプするシーンがありますが、これはCGではなく本物のシーンという事です。更に直後、ひっくり返った車内で宙づりになっているペンギンの目から見るバットマン歩み寄る逆さ映像、絶対に見逃してはならない場面です。
おすすめ新作映画感想|『THE BATMAN ザ・バットマン』(2022/マット・リーブス監督)ロバート・パティンソン演じる新バットマン!
第9位『父さんのバイオリン』(2022/アンダチ・ハズネダロール監督)
Netflix動画配信で視聴。たった一人の家族である父親を病気で亡くした8才の少女は、養護施設に引き取られるはずでした。しかし、死期を間近にした父親は、以前から長い間疎遠だった名バイオリニストの叔父(弟)メフメトのもとへ会いに出掛け、一人娘の存在を知らせていました。
父の死後、まったく孤立無援で身寄りの無い姪っ子を引き取ることを当初はメフメトは嫌がっていましたが、人情味のある妻の助言を聞き入れ、家に渋々引き取り育てる事になりました。やがて、孤独感を抱えた叔父と純真な心を持つ姪っ子の2人は互いの悲しみと音楽への愛を分かち合い、次第に離れていた心にきずなが芽生え始めることになります。それはバイオリニスト自身をも大きく成長させることにもなっていきました。
見慣れたアメリカやヨーロッパ映画とはまったく雰囲気の異なるトルコ映画です。また、随所で演奏されるバイオリン音楽も曲名等など全く知らないのですが、聞覚えのある名曲もありました。各シーンの雰囲気に見事にマッチした曲の数々、とても気持ちの良い音楽が奏でられていました
動画配信中 新作映画感想【父さんのバイオリン】(2022/アンダチ・ハズネダロール監督)希少なトルコ映画、素晴らしい感動作!
第10位『ナイル殺人事件』(2022/ケネス・ブラナー監督)
ミステリーの女王アガサ・クリスティが1937年に発表した有名な「ナイルに死す」を、同じくクリスティ原作の「オリエント急行殺人事件」(17)を手がけたケネス・ブラナーの監督・製作・主演で映画化。
エジプトのナイル川をめぐる豪華客船の中で、美しき大富豪の娘リネットが新婚旅行中のナイル川で、何者かに殺害される悲劇的な事件が発生します。容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員だった。名探偵エルキュール・ポアロは“灰色の脳細胞”を働かせて、見事に密室殺人事件の真相に迫っていきます。
ナイル川を優雅に走る蒸気船『カルナック号』は、すべてセットで全長236フィート(約72㍍)完成するのに30週間を要した大作(!)という。
ベルギー訛りの英語と口ひげがトレードマークの探偵ポアロ役を、前作「オリエント急行殺人」同様にブラナーが自ら演じた。そのほか、第一の被害者であるリネット役に「ワンダーウーマン」のガル・ギャドット、その夫サイモン役に「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマーなど豪華キャストが集結している。
公開中 おすすめ新作映画【ナイル殺人事件】(2022/ケネス・ブラナー監督)公開延期が続いていましたが、ついに日本上陸!
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